桜と永久の約束

□初恋は実らない
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「きゅー」



自分の手元に重みがかかった。
視線を手に向けると、そこには見たこともない生き物がいた。



「貴方はだあれ?小鳥さん、じゃなさそうね」


「きゅーきゅー」



桜の声に反応して、それは鳴く。



「貴方はどこから来たの?」



さっきまではいなかったはずのその生き物は、いつ自分の手元に乗ってきたのか。



「きゅー」



カチャ。



扉が開く音。
そちらを向くと、片手に器を持った八戒さんが立っていた。



「ここにいたんですね、ジープ」



扉を閉めて、こちらに近づいてくる。



「八戒さん――」


「八戒で構いませんよ」


「この子はお仲間ですか?」


「この子はジープと言います。僕たちの旅の仲間で、小さな龍です」


「龍?」


「はい。身体は小さいですが、僕らにとって大切な仲間なんです。
ジープ、彼女はしばらく預かることになった桜です」


「きゅ〜」



八戒の言葉に反応して、ジープは彼女の頬を舐めた。



「ふふっ、くすぐったい」


「どうやらジープは貴方のことを気に入ったようです」


「よろしくね、ジープ」


「さて、どうぞりんごです。
食べれるだけでいいので、少しは食べてくださいね」


「はい」



八戒から渡された器を手に持つ。
切られたりんごをひとつ取り、かじる。



「甘い」


「それはよかったです。では、僕は夕飯を食べてきますので、ジープ彼女のことお願いしますね」


「きゅー」



八戒は扉をゆっくり閉め、出て行った。
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