桜と永久の約束
□朋との誓い
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「ったく、うるせェんだよ。人が感傷に浸ってるってのに…」
「菩薩が、感傷に浸る……」
その姿が想像できずに二郎神は青くなる。
「ぁあ”?…いい度胸だな、二郎神。まぁ、俺は心の広い神だから特別に許してやるよ、特別にな。
…で、何があった?」
菩薩は、ニヤリと笑っていたが、声音を落とし真剣な眼差しで二郎神を見やる。
つられて二郎神も声を低く落とし、硬い表情を向ける。
「実は、下界へ続く次元ゲートが何者かによって開かれたようです」
「で?」
「“で?”とは?」
「それだけじゃこれだけの騒ぎにならねーだろ。誰だよ、こんな忙しい時に」
「おかしいことに…それが、二人の兵が無傷で眠らされていたそうです。…彼らによると、歌声が聞こえたとか」
「歌…ね」
「もしかしたら…」
「そうだな。そんなこと、こいつ以外できねーだろ。らしいじゃねーか。無傷で眠らせるなんて」
菩薩は、鎖に繋がれた彼女を見やり、ニヤリと笑う。
その時。
シュンッ。
「ん?」
ひと振りの刀が菩薩の手の中に落ちる。
「その刀は!?」
「こいつのだ」
「それは確か、菩薩の部屋にあったものでは?」
「ああ」
菩薩は、手の中の刀を見つめる。
降ってきたはいいが、何の反応も示さない。
「来たるべき“その時”が近づいてるようだな」
「菩薩?」
「二郎神、行くぞ」
そう言って、二郎神の横を通り過ぎる。
「…は、え?どこへ参られるのですか?」
「いいからつべこべ言わずついて来い」
「は、はい!」
二人はこの場を去る。
未だ、牢の中の“彼女”は目覚めぬまま。