桜、舞い散る

□討伐命令
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――天帝城・広間



「闘神哪吒太子、前へ」



場内はざわめき立っている。
天蓬、紫鴛、是音は黙って哪吒を見据える。



「哪吒太子のお出ましだ」


「ナマイキなガキのくせして闘神たぁな」


「身の丈が何十倍もある化物を一撃で仕留めるらしいぜ」


「何せ奴には鬼が宿ってるからな」



集まった兵たちが口々に哪吒に対し嫌味を言い合う。



「誰の腹から生まれたかも怪しいもんだ…」



そう一人の男が言うと、後ろから一つの手が伸びる。



「うぐ!!?」


「…言いてェことはもっとでかい声でしゃべんな」


「もがッ…」



その手は、西方軍大将・捲簾だった。


哪吒は天帝の前に出て膝をつく。
その後方に李塔天が立つ。



「哪吒よ、お前を呼んだのは他でもない」


「――鼻毛。まだうっすら残ってますけど」


「…哪吒…かような悪戯は水に流すとしよう」


「お前には重大な任務を命ずる。下界へ行け。私欲のままに人を喰らい下界の秩序を乱す者、大妖怪牛魔王の討伐だ」


「かしこまりました。ありがたく拝命いたします」


哪吒ではなく李塔天が応じる。



――くだらねぇ奴ら



「奴は破壊神と呼ばれるほどの力を持つ。…だがしかし、お前にかかればひとたまりもないであろう。」


「微力ながらも、必ずや仕留めて参ります」



天帝と李塔天の声だけが場内に響く。



「行ってくれような?」



――俺はどうせあんたらにとって殺人人形でしかねぇんだろ?



哪吒は冷たい目で床を見つめる。



(俺はあんた達みたいな大人にはならない)



「御意」



(絶対に―――)



哪吒は目を閉じ頭を下げた。



「それでは」



李塔天が一言告げ下がる。
それに続き、哪吒も下がろうとした。



「待て哪吒、まだ話は終わっておらん」



天帝の一言により哪吒はその場に留まる。



「前へ」



天帝のその一言により場内が静まり返る。
すると、



カッ、カッ



一つの音が響き渡る。



人だかりの中からひとつの影が現れる。
黒いローブで全身を多い、右の腰あたりにひと振りの剣を携えている。
ローブから覗く顔は、上半分を狐の面により隠しており、口元は布で覆われている。



(誰だ、あいつ)



捲簾は眉をしかめた。
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