桜、舞い散る
□大切な名前
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――金蝉・寝室
「友達ができた?」
「うん!!エラソーだけど面白い奴だった」
「良かったじゃねェか」
「うん!!!」
───しかし、この城内でコイツと同じ歳頃といったら
───まさかな
じ――。
「…何だよ」
横を見ると、ガキが俺をじっと見ていた。
「なぁ、金蝉俺に名前つけてよ」
「何を突然───」
「だって、桜花姉に言ったら金蝉に頼んでみたらって…。それに俺…今度あいつに会った時名前教えてーんだ!!ちゃんと名前で呼ばれたいんだ、だから…」
「──そのうちな」
金蝉はベッドに寝転がる。
「ヤだっ、今がいい!!今すぐ!!」
「金蝉、つけてあげたら?それに名前がないと不便だわ」
桜花が寝室に入ってきて悟空を弁護する。
夜、桜花が寝室に来るのは最近の日課だった。
「じゃあ『猿』な、『猿』で決定」
「金蝉」
「金蝉のバ──カ!!人がせっかく頼んでんのに!!」
ガキが、俺に枕を投げてくる。
「ッてめェ、調子にのってんじゃ…」
思わず起き上がると、ガキが軽く泣いているのが目に入った。
「…悟空」
金蝉は再びベッドに横になりながら言った。
「『悟空』だ。短くて簡単だから猿頭でも覚えられるだろ」
「…うん」
「良かったわね、悟空。」
悟空の頭を撫でてやると、嬉しそうに抱きついてきた。
思わず抱きしめ返す。
「ごくう…。えへへ、そっかあ俺『ごくう』かぁ」
「悟空。その名前、大事にするのよ?」
「うん!!!」
悟空は、はにかむように笑うと金蝉にまとわりついた。
「ね、どーゆー意味、どーゆー意味?」
「うるさいもう寝ろ!!」
「何だよケチー」
「ほら、悟空寝ましょ。子守唄歌ってあげるから」
「わかった」
素直に桜花の言うことを聞いて、悟空は横になる。
枕元に座り、子守唄を歌ってやる。
すぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。
それを確認すると、桜花は静かにいつも通り自室に戻ろうとする。
「おい、行くのか?」
「ええ、おやすみなさい。悟空のベットじゃ小さくて眠れないもの」
一緒に寝たら落としてしまいそうだ。
「だったら…」
金蝉はベットの端により、掛け布団を開く。
「来い」
「…それは、本気で言ってるの?」
「俺は冗談は言わねぇ」
「……」
桜花は困った顔で金蝉を見つめる。
「早く来い、疲れる」
「…全く、相変わらず強引ね」
「…フン」
「じゃあ、失礼します」
桜花は金蝉の布団の中に潜り込む。
金蝉との間に隙間を空けて。
「こっちに来い」
そうすると、無理やり身体を引き寄せられる。
金蝉の体温を感じ思わず顔が熱くなる。
「こ、金蝉。何して…」
「うるさい…。俺は寝むいんだよ、さっさと寝ろ」
「………。――おやすみ、なさい」
桜花は金蝉の腕の中で眠りに就いた。
その日は、穏やかに眠ることが出来た。
金蝉の腕の中はとても居心地がよくて、太陽の温もりのように暖かかった。