桜、舞い散る

□支えてくれる人
1ページ/3ページ



――観世の城・謁見の間



桜花は去っていく金色の後ろ姿を見つめながら、観世の方へ向き直る。
観世はというと、ニヤリと笑いこちらを見ていた。



「金蝉のあんな姿、初めて見たぜ」


「楽しそうね」


「そりゃ楽しいさ。これからもっと楽しくなりそうだ」


「どういうこと?」


「それは、まだナイショだ(ニヤリ)」


「…そう。――それで?さっきのこと詳しく話してくれるんでしょ?」


「…ああ、あのガキのことか。桜花、お前子供好きだろ」


「え、ええ」


「だから、いいだろ」


「え?待って、それだけの理由?」


「ああ、そうだ。まぁ、金蝉だけっていうのも不安があったしな」



そう言う観世の表情は楽しそうに口端が上がっている。



「はぁ…」



桜花はため息をつく。



「そういや、お前自分がどんだけ眠ってたか知ってるか?」


「さぁ?でも私が闘神の任を降ろされて、後任に新しい者が就いている限りでは随分私は寝ていたようね」


「全くその通りだ。お前が死んでる間、まぁいろいろあったぜ」


「私がいつ死んだのよ」


「死んでたようなもんだろ。200年も飲まず食わずで眠り続けたんだから」


「200年…ね。まぁ、今回は寝過ぎかもしれないわ」


「ったく、心配したぜ」


「ごめんなさい。――こんな私でも痛む心を持っていたらしいわ」


「200年前の討伐命令か…」


「うまい具合に嵌められた…。あんな結末になってしまったのも、私の力不足だわ。私にもっと力があれば…」



桜花は拳を握る。
爪が手のひらにくい込む。



「――なぁ、桜花。心配してたのは俺だけじゃないんだぜ。なぁ、二郎神」



ずっと黙り続けていた二郎神に話を振る。



「ええ、私も心配しておりましたずっと――」



二郎神の眉は悲しげに歪められていた。



「桜花様!!!」



二郎神は急に声を荒げる。



「私は貴方様に言いたいことが数知れず山のようにあるのです!!!」


「まぁ、落ち着けよ二郎神」


「こうなるとは思っていたけど、実際そうなるとかなり面倒くさいわね」


「まったく、あの時は何事かと思いましたよ。
200年前いきなり、

『桜花は深い眠りについた。お前、あいつが起きる間暇だろ。俺の副官になれ』

そう観世音菩薩に言われ、連行され」


「そんなこともあったな」


「しかも、これは貴方様の命令だと…」



そう彼――二郎神は、200年前までは桜花の世話係であった。



「貴方が眠りについて彼これ200年、菩薩の世話をする羽目になってしまいました」


「酷い言われ用だな」


「こうなったのも、貴方様のせいです!!!そもそも何故一言でもこうなることを教えてくださらなかったのですか!!
いつもいつもあれほど大事なことはお伝えくださいと何度も何度も…」


「ああもう、うるせェよ二郎神。そのくらいでいいだろ」



(そう、私が200年前眠りにつく前に向かった場所――それは観世のいる処だった)
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ