桜と永久の約束

□繋いだ掌
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次の日の朝を迎えた。
三蔵と桜は二人で宿を出た。


二人は連れたって歩く。
どこに行くという目的もなく、二人は小さな街を歩く。



カラン、カラン。



桜の履いている下駄が音を立てる。
裸足の桜を気遣って八戒が持ってきたものだ。
宿の店主が景気よく用意してくれた。



「腹は減らねぇのか。倒れられちゃ、こっちは迷惑だからな」



三蔵なりの精一杯の気遣い。
耳の奥で聞こえる八戒の言葉に三蔵は小さく唸る。



『彼女、食欲がないそうなので街に出かけるなら彼女にきっちり何か食べさせて下さいね。
病み上がりで無理させるのもあれなのですが、部屋に篭もりっきりというのもどうかと思うので。
―――と言うことで、桜のこと頼みましたよ三蔵(ニコリ)』




と、黒い笑みで言われたものの。



「いえ、空腹ではありませんから」



さっきからこの調子である。



「馬鹿猿もそれぐらいの食欲になって欲しいもんだがな」


「猿?」


「悟空だ。あいつは口を開けばどこであろうと『腹へった』、だからな」



三蔵の呆れ混じりの声に、桜はクスリと笑う。
黒いフードを被った彼女の肩が揺れる。



「元気な悟空らしくていいことだと思いますよ」


「あいつの食欲は並じゃねぇんだよ。甘く見るな」



何が面白いのか桜は笑う。
楽しそうに、嬉しそうに。


三蔵は横目でチラリと彼女を見る。
ふいに彼女の身体が傾く。
どうやら何かに躓いたらしい。



「きゃっ!」



傾く身体を引き寄せ支える。



「!?おい、大丈夫か」


「はい、大丈夫です。すみません」


「お前はよく倒れるな」


「そうですか?そんなことは――」


「気をつけろ」



そう言って三蔵は身体を離す。
二人の間に距離ができる。
しかし、



「?」



桜は手にぬくもりを感じた。
それは、ゴツゴツしてて大きくて、暖かかった。
ちらっと見ると、自分の手と彼の手が繋がれていた。



「行くぞ」


「三蔵、さん?」


「何度も転ばれちゃ、めんどうなんだよ」



ぶっきらぼうな声。
でも、握られた手は一層強く握られる。



「――はい」



桜は彼の暖かさに懐かしさを感じた。
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