ver.ボケ
□★-兄弟
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「ふぁー。」
とある番組の収録前。
楽屋の二人きりの空間に、
三村の力の無いあくびが漏れた。
「おーたけ、眠い!」
「知らねーよ」
俺はスポーツ新聞を読みながら
適当に返事をした。
「んだよ、冷てぇな」
三村は俺に向かって
可愛い膨れっ面を披露すると、
ソファに横になった。
暫く沈黙が続く。
「…寝たのか」
俺は静かに着ていたパーカーを脱ぎ、
ソファで眠る三村にそれをかけた。
「ん…ありがと」
「んだよ、起きてんのかよ」
三村が俺のかけてやったパーカーを
自分の首もとまで被り直し、口を開く。
「大竹って、いいお兄ちゃんだったんだろうなぁ」
「は?」
いきなりよく分からないことを言い出す
三村を他所目に煙草に火をつける。
「俺、下だったからさ。大竹は、妹いるじゃん?だからこうやって、当たり前みたいに優しいこと出来んのかなって」
「…意味わかんねぇ」
「何照れてんだよ」
「別に照れてねぇよ」
俺はそう言いながら、
三村が寝ている向かい側のソファに
戻り腰を下ろした。
「お兄ちゃんっ」
三村が横になったまま
笑顔で俺に言う。
「うるせぇよ」
俺を冷やかす三村にそう告げ、
読みかけのスポーツ新聞に視線を戻す。
…お兄ちゃん、か。
実際、妹にもお兄ちゃんなんて
呼ばれたことがない。
だからすげぇ不自然だ。
「お兄ちゃんねぇ…」
「ん?なんか言った?」
「いや、何でもねーよ」
なんか、悪くねぇな。
『お兄ちゃん』っつーのも。