ver.ツッコミ

□☆-くん
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「みーむーらーくん」



現在楽屋に二人きり。

低いテーブルを挟んで
俺の向かい側のソファに座る大竹が
珍しい呼び方で俺を呼んできた。


「んー?」


番組で始めた某つぶやきサイトを眺めながら
適当に大竹に返事をする。


「好きって言ってよ」

「…は?」


大竹の唐突すぎる発言に
思わず吹き出してしまう。

なんだよ、それ。



「好きって言えって!」

「いやそんなん今言わなきゃいけねぇ意味が全然わかんねんだよ!」


俺がそう言うと、大竹は
膨れっ面を披露しながらそのまま
ソファに寝そべるように倒れていった。


「じゃあ三村くんは俺のこと嫌いなのねもういいよバカ!」


うつ伏せで顔に両手を起き、
一息に文句を言う大竹。


「嫌いとか一言も言ってねぇだろ?」


騒ぐ大竹を横目に、
俺は慣れない手つきで
つぶやく内容を打ち込み始める。


「じゃあ、好き?」

「おぉ」

「どんくらい?」

「…はぁ?」

「言えよ!どんくらい?」

「意味わかんねぇ…」

「どーんーくーらーいー!?」


余りにも大竹がうるさいので
イヤホンで音楽を流し回避する。

大竹はどうやらまた何か騒いでいるようだが、
俺の耳にはその声が全然入ってこない。

これで邪魔は消えたので思う存分、
文字を打つことに集中できる。

…そう思った瞬間、
左手耳のイヤホンがふいに外される。

犯人は、さっきまで目の前に居たはずの大竹だった。

俺が集中している間に、
隣に来ていたらしい。


大竹はそのまま、俺の隣にくっつくように座ってきた。

そして、俺の耳から奪った
片方のイヤホンを自分の耳につけた。


「これ俺も知ってる」


そう言うと、小さく鼻歌を歌い、
至近距離の俺にぶつかりながら
小刻みに揺れて音楽にノリだす。


「静かにしてろよ」


俺はそう言って、
またスマホに視線を戻した。
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