報われない住人達の部屋

□快楽に捧ぐ哀切
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狭い部屋にベッドのスプリングが軋む音が耳障りに響く。

その騒音に混ざって、私の嬌声と彼の荒い息遣いが鼓膜を揺らす。

今日もまたこうして肌を重ねてしまった。

乱暴に揺すられながら私はシーツを握り締め後悔する。

私は彼が好きだ、愛してる彼の為に自ら切り落とした小指がその証。
彼は何も言わずその様を見届け、手当をしてくれた。
…………何も言わず。

彼に私を好いているかどうかを聞くのは容易い行為だ。
それなのに、私はずっと聞かずにいる。
聞けないでいる。

こうして頻繁に肌を重ね、ナカに子種を注がれているのだから
嫌われている訳ではないと思う。
けれど、嫌われていない事と好かれている事は全くの別物なのだ。

喉から紡がれるのは甘ったるい私の嬌声
…気持ちいい
なのに不思議と頭は冷えていて、さっきから胸を掻き毟りたくなる様な事ばかりが脳裏を過る。

「……何考えてるの?」

動きを止め、心配そうに私の目を見つめる彼
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