報われない住人達の部屋

□幸せ
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私達が出会ったのは大学生の時だったかな
卒業も近くて慌ただしかったけど
一緒にいて楽しくて幸せだった

苦学生だったからかな
お金がなくてあんまり遠出も出来なかったよね

私は貴方が傍にいてくれればそれだけで良かったし
私が家に帰って「おかえり」って言ってくれる貴方の存在が嬉しかったんだよ

春は私のせいでどこにも行けなかったね
貴方が桜を見に行きたがってたの知ってるから
「一人で行ってきて良いんだよ?」って何度も言ったのに
その度に「お前がいなきゃ綺麗なもんも汚く見える」って訳の分からない事言ってたっけ

夏にベランダで肩を並べてスイカ食べたの
覚えてる?
蚊取線香に火をつけて、入道雲見てたら
貴方が「あ、あの雲犬に見える!」って言ってはしゃいでたっけ

秋は二人でお出かけする事も多かったね
「寒くないか?」って私を見下ろして言う貴方の方が薄着で
あの時私が寒いって言ってたら一枚しか着てないTシャツを着せてくれたのかしら

冬は二人で沢山お鍋したね
具材に高価な物はなかったけど
美味しそうに食べてくれる貴方が大好きでした
鼻水啜りながら二人で食べたお鍋はきっと一生忘れません

私は少しだけ早めに寝ちゃうけど
貴方はゆっくりしてね
やりたい事全部やって満足してから目を閉じて下さい
私は凄く凄く幸せで、これ以上ないくらいに満たされてました

おやすみなさい


私、幸せで…………

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