坊主と私と○○○
□彼と私と将来の夢
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少しずつ日の長くなったとある日。
まだ明るい道を愛子は憂鬱な気持ちで帰路についていた。
足が重くなる。
自然と下がる視線は、聞き覚えのある声を耳にした途端上がった。
「いやあ、いつもありがとう。助かるよ」
「いいのよう。うちの子小食だからおかずがあまっちゃってえ」
聞き覚えのある声に続く妙に甲高い甘えた声。
見れば三人の妙齢の女性に囲まれた金時がいた。
金時の手には紙袋とスーパーの袋が幾つかある。
「うわっ、旨そうな煮物。俺、多田さんの煮物好きなんだよう。前に好きだって言ったのもしかして覚えててくれたの」
「ええ、ええ、そうよう。前に分けたときすごく喜んでいたからねえ。はりきっちゃったわよう」
金時はビニール袋越しに見える中身にテンションの高い声を上げ、それに応えるように甘えた声が続く。
愛子は思わずあんぐりと口を開けて凝視した。
確か今日は金時が食事当番だったはず。毎回金時は和洋折衷なおかずを提供する食事当番としてなかなか人気だ。
だが、誰も金時が料理するところを見たことがない。
愛子は今この瞬間、金時のカラクリを見てしまった。
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