坊主と私と○○○

□坊主と私と日常風景
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「つーか、味噌汁に鰹節入ってるし…」
「こっちはニボシ入ってるよ。出汁とったらとれよお」

 お椀を持ち、味噌汁に浮かぶ鰹節を摘んで顔をしかめる青年。その隣に座る彼にそっくりな顔立ちの青年は味噌汁に沈んでいたニボシを掴み上げると同じように顔をしかめた。
 二人の向かいには小学生の男の子が座卓にあう高さの車椅子に座り、声を上げる。

「お父ちゃん、このお漬け物切れてないよう」
「マンガでも最近見ないよな、こんな漬け物…」

 車椅子に座る少年の隣には学ランを身に纏う少年がずらりと連なる胡瓜の漬け物をつまみ上げて見せた。
 四方八方から上がる不満の声に住職は箸を食卓に叩きつけると勇ましく立ち上がった。

「おうおう、てめえら揃いも揃って人様が朝早くから作ったもんに文句つけやがってっ。表出ろ、表。根性叩き直してやるっ」
「上等だ、受けてたってやらあ」

 住職が立ち上がると同時に金髪の青年も立ち上がり、お互いに胸倉を掴み合った。
 それを見た同じ顔立ちの青年、双子は示し合わせたように食卓の端を持ち、広い居間の隅へと移動させる。
 学ランの少年は車椅子を引き、自らに害が及ばぬようにと双子に習って隅に身を寄せた。



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