マジすか

□その他
2ページ/16ページ

『マジすかアーリータイムズ』


「みなみバカじゃないの!」
「敦子だろ!」
些細なことで二人は
掴み合いのケンカになり
殴り合いの一歩手前まで行った。
「あー、じゃあもういいよ!
アタシらもう絶交だかんな!」
そう言ったのはみなみだった。
「こっちのセリフだよ!
もうみなみの言うことなんか
ぜってー聞かねえ!」
敦子も声を荒げて返した。
それから二人は
一切口を聞くことは無かった。

口を聞かなくなって数日が経ち
なんとなくもやもやした
心のままだった敦子の
ケータイにメールが入った。
送り主はみなみだった。
敦子はメールを開いた。
そこには廃倉庫の場所と
手を後ろに縛られた状態の
みなみの写真が添付されていた。
それを見た敦子は反射的に
書かれていた倉庫に向かっていた。

みなみを拉致して縛り上げたのは敵対校の連中だった。
「そろそろ
前田さん呼んでくれません?」
連中の中核の女が挑発的な口調で
みなみに言った。口元に痣が出来て
身動きが取れない状態で
その言葉を聞いたみなみは
鼻で笑った。
「何が可笑しいんだよ!」
女は みなみの顔をもう一発殴った。
「悪いねぇ。アタシと敦子は
もうダチじゃねえんだ。だから
アタシ使っても敦子は来ねえよ。」
その発言を聞いて苛立った女は
みなみの腹を蹴った。みなみは
息が出来なくなり咳込んだ。
その瞬間倉庫の大きなドアが開き
敦子が現れた。
敦子に気付いたみなみは
目を丸くした。女は前田を見ながら
みなみを指して
「あれぇ?前田さん。
見ず知らずのこの女に
何か用ですかぁ?」
そう言った。敦子は何も言わず
みなみを見た。
「敦子!お前には関係無い。
失せろ!」
みなみはそう言ったが
敦子は立ち止まり
ずっとみなみを見ていた。
「聞こえねえのか?
お前とはもうダチじゃねえんだ。
消えろ!どっか行け!」
みなみがそう叫んでも敦子は
一歩も動かなかった。
全く動かない敦子を見て
女は薄ら笑いを浮かべた。
「前田さん。そこから
動かないほうがいいですよ。
じゃなきゃあなたの大事な友達が
どうなるかわからないですよ。」
「早く逃げろ!」
みなみは無意識のうちに
そう叫んでいた。しかし
その言葉の直後に
敦子の横にいた女が
敦子の頬を殴り飛ばしていた。
敦子は少しよろめいた。
「よっしゃお前ら!パーティだ!」
中核の女がそう叫ぶと
その場にいた女全員が堰を切って
敦子に殴りかかった。
敦子は全く反撃せず
女達のサンドバッグと化していた。
二人で敦子を押さえて
目の前にいた一人が
跳び蹴りを喰らわせたり
倒れた敦子の髪を掴み上げて
その顔面に膝蹴りをしたりと
さまざまなやり方で
敦子の傷を増やしていった。
「やめろー!」
みなみの叫び声も
ただのBGMでしか無かった。
しばらくして蹴り飛ばされると
敦子はそのまま
立ち上がらなくなった。
「前田さんは喧嘩がお強いって
聞いてたんですけど
こんなもんですか?」
中核の女が敦子を見ながら
笑いに混じってそう言うと
周りの連中も
敦子のことをあざ笑った。
みなみは 敦子に目を向けながら
目に涙を溜めていた。
連中はそのまま笑いながら
倉庫から出て行った。
連中が出て行くと
敦子は重そうに体を起こし
左足を引きずりふらつきながら
みなみの元へ歩み寄った。そして
みなみの手を縛っていた
縄をほどいた。
縄には血が付いていた。
縄だけでなく縄が食い込みながら
敦子が殴られている間ずっと
必死でもがいていた
みなみの手首にも血が滲んでいた。
縄がほどかれるとみなみはすぐに
敦子の頬を平手でひっぱたいた。
「ダチじゃねえのに
なんで来たんだよ!
なんでアイツらに
殴られっぱなしなんだよ!」
みなみの声は怒りと涙で
震えていた。
「ダチじゃなくねえよ。」
敦子はそう呟くと
みなみのほうを向き笑って見せた。
「それに言っただろ。
もうみなみの言うことは
ぜってー聞かねえって。」
「バカヤロ・・・」
みなみは目に溜まっていた涙を
一気に流しながらそう言って
敦子に抱き着いた。

「ゴメン・・・」
みなみの肩を借りながら歩いていた
敦子が不意にそう言った。
「私もゴメン・・・」
みなみもそう口にした。
二人はお互い目を合わせ笑った。
「でもよ敦子。お前
少しやられすぎじゃね?
下手すりゃ死んでたぞ。」
「そうみたいだな。
今度から気をつける。」
敦子はそう言うとみなみを見た。
「みなみもな。」
それから二人は
[お互いのために
勝手に死んだりしないこと]
という約束を交わした。

「敦子には手出させねえよ。」
そんな約束を交わしみなみ自身も
喧嘩を辞めてから数ヶ月。
みなみはまたしても
敵対校に囲まれていた。
目的は敦子でみなみに
敦子を呼ぶよう迫ってきた。
喧嘩を辞めた手前
ヤツらの言いなりになって
土下座もしたがそれでも
敦子を呼ぶよう脅してきた。
みなみは地面に叩き付けられ
クラクラしながら体を起こし
「敦子には手出させねえよ。」
そんな言葉を口にして
最後の喧嘩を覚悟した。
「悪い敦子。敦子との約束
守れそうにねえわ。」
みなみは階段を転がりながら
心の中で敦子に謝った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ