世界は闇で満ちている

□第一章
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『Baby,I want you』


「終わった−!」
書類を書き終えた遥香が
持っていたペンを投げ捨てながら叫んだ。
「随分と元気だね・・・」
彩が溜息混じりに呟いた。
「明日休みだからね。」
遥香はそう言いながら彩に絡みついていた。
「さや姉。明日どっか行かない?」
「悪い。明日は予定あるんよ。」
「またデート?」
「まあな。」
彩ほそう言うと時計を見て
荷物をまとめていた。
「毎日毎日ご苦労だね。」
「苦労ってわけてもないけどね。」

翌日彩はいつものように
病院へ足を運んでいた。
病室を開けると由紀は既に起きていた。
「おはよう。」
由紀が笑顔を浮かべると
彩は傍らに腰を降ろした。
「今日は非番だからさ。」
「それで。」
「それでって?」
彩が首を傾げると由紀はドアを指差した。
振り返ると隙間から遥香の目が見えた。
「あ!」
彩と目が合うと遥香は慌ててドアを閉めた。
「ぱるる!」
彩が遥香を追いかけていくのを見て
由紀は笑っていた。
「仲の良いこと。」
彩がドアを開けると
遥香は傍の壁に貼り付いていた。
「何してんの?」
彩は溜息を吐きながら
遥香の頭を掴んだ。
「そのうち紹介するって言ったやん。」
「だってさや姉の仕事より大事な人
気になるじゃん。」
「まあ折角だから紹介するわ。」
遥香は中へ入れられると
由紀を見て頭を下げると
彩へ耳打ちをしていた。
「綺麗の人だね。意外だけど。」
「意外って何?」
「さや姉ってそういう趣味なんだ。」
「違わい。私の姉さんだよ。」
「お姉さん!?」
遥香ほは目を丸くして再び由紀を見た。
「わ、私・・・あの・・・
島崎遥香って言います・・・
彩ちゃんの友達で・・・」
「相棒でしょ。」
「はい?」
「姉さん。元刑事。」
遥香はまた目を丸くした。
「驚いた?」
由紀が含み笑いをしながら
遥香へ目を向けていた。

二人は一緒に帰った。
「悪かったな。期待に添えなくて。」
「ねえ。由紀さんってどうしたの?」
「昔ちょっと事故に遭ってな。
下半身不随になったんよ。」
「事故?」
「その話はまた追い追いな。」
彩は乾いた笑いを浮かべながら
歩いていた。
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