BAD GIRL BLUES

□SERIES 9
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『脆弱』


帰り支度を済ませた優子が
玄関を出た時
数人の男が周りを取り囲んだ。
「どちら様ですか?」
口を開いた直後
脇腹にスタンガンを当てられ
気を失った。

目を覚ますと
近くの排水管に手錠で
両手を繋がれていた。
辺りを見回すと
さっきの男の数人の姿が見えた。
「誰だお前ら?」
「さっきと随分と
口調が変わったな。」
「いきなり気絶させるような奴に
礼を尽くす必要は無い。」
「そうか。」
「何の用だ?」
「お前らが今追ってる殺人事件。
こっちによこせ。」
「は?」
「所轄の手に追えるヤマじゃない。
触れない方が身のためだ。」
「・・・もみ消す気か。」
「まあそうとも言う。」
「素直に聞くと思うか?」
優子が笑うと男も笑った。
「素直になってもらわないと。」
男が合図をすると仲間の男が
顔を腫らしボロボロになった
ゲキカラを引きずってきた。
「ゲキカラ・・・」
その姿を見た途端
優子が暴れ出した。
「やめろ!!彼女は関係ない!!」
「散々事件の事嗅ぎ回って
それは無いだろ。」
男の背後ではゲキカラが
尚も殴られ続けていた。
「やめろ・・・」
「お前次第だ。」
「・・・事件からは手を引く。
お前らにも関わらない・・・
だから頼む・・・
もうやめて・・・」

誓約書に拇印を押させた男は
仲間に合図して
ゲキカラを放り投げ姿を消した。
ゲキカラは顔を上げると
俯き泣いている優子が見え
這いずり手錠を外し始めた。
「ゲキカラ・・・」
手錠を外すとゲキカラは
優子にもたれかかった。
「・・・ゴメン・・・」
優子から絞り出すような声が
聞こえた。
「大丈夫です・・・」
そう言いながらゲキカラは
体を起こし優子を抱き寄せた。
「私はちゃんと生きてます・・・
シブヤさんや有華さんは
可哀相でしたけど
私もブラックもサドさん達も
まだちゃんと生きてます・・・
何があっても優子さんの周りから
いなくなりませんから
そんな無理しないで下さい・・・」
「ゲキカラ・・・?」
「優子さんが笑ってるから
皆安心してついてけるんです。
でも優子さん二人が死んでから
あんまり笑ってないから
ずっと不安で・・・」
「・・・ゴメンな。」
優子は笑顔を浮かべると
ゲキカラの頭を撫でた。
「ありがとな。助けてくれて。」
ゲキカラが首を横に振ると
優子はゲキカラを背負った。
「相変わらず細くて軽いな。」
「・・・スイマセン・・・
せっかくもう少しで
解決出来そうだったのに・・・」
「いや。いいんだ。
私もムキになってた。
お前のおかげだ。」
そう言って歩き出し外へ出た。
「・・・一気に二人もいなくなって
気持ちの整理つかなかったんだ。
お前ら生かす事に必死で
笑うなんて事忘れてたよ。
でももう大丈夫だ。
明日からはいつも通りだ。」
返事をしないゲキカラを見ると
ゲキカラは寝息を立てていた。
「んだよ。せっかく良いこと
言ってんのに。」
ぼやきながらも
優子の顔は笑っていた。
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