マジすか

□その他
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『さすらいの歌』


『卒業式終わったら
屋上まで昇ってこい!
ケリつけてやる
大島優子 』

敦子が自分の靴箱の中に
そう書かれた手紙が
入っているのを見つけたのは
卒業式当日だった。
敦子はその手紙をカバンにしまい
教室に入るとチームホルモンが
敦子に近付いてきた。
「優子さん達とケリつけるんだろ。」
ウナギの問いに
敦子は無言で頷いた。
「アタシも・・・行く!」
ムクチが言った。
「アタシもじゃねえ。
アタシ達もだろ。」
横からアキチャが言い直した。
「手伝うぜ。」
そう言ったのはバンジーだった。
「大丈夫。アタシ一人でいい。」
そう言って立ち上がった敦子の前に
ヲタが立ちはだかった。
「優子さんだけじゃねえんだ。
ラッパッパ全員と戦う
って事なんだぞ。さすがの敦子でも
一人じゃ無理だ。」
「ありがとう。でも・・・」
「でもじゃねえ!」
ヲタは柄にもなく
敦子の胸倉を掴んでいた。
「お前と優子さんだけの
喧嘩じゃねえんだ。
もうマジジョ全体を
巻き込んでるんだよ。
お前が断ってもアタシらは
勝手についてくからな。」
ヲタは掴んでいた胸倉を離した。
「前田さん。こんな時に仲間割れは
ダメなんじゃないですか?」
そんな甘ったるい声が
聞こえてきた。敦子達が
教室の入口を見ると
歌舞伎シスターズが二人揃って
立っていた。
「こんな喧嘩
二度と出来ないだろうからな。」
小歌舞伎が
敦子に向かってそう言った。
すると歌舞伎シスターズの脇から
学ランが顔を出し
敦子に拳を向けた。敦子は
その全員を見回して一度笑うと
メガネを外した。
「あ、そうそう。
さっき校門のトコでコイツ見たぞ。」
学ランが急に口を開いて
指差した先から
みなみが入ってきた。
「みなみ!なんで!?」
敦子は思わず叫んでいた。
みなみは敦子の前まで行くと
「ダチだから。」
それだけ言った。
全員揃った前田軍団は
ひとまず卒業式に出た。

卒業式は
特に何も起こらず進んで行った。
しかし証書授与のとき
優子が壇上から降りる瞬間
敦子を見て笑っていた。

卒業式が終わって
関係無い連中が帰ると
2-Cに集まった前田軍団は
敦子を先頭に教室から出た。
しかし教室を出てすぐに
チョウコクが壁に寄り掛かって
敦子達を見ていた。
「私も行っていいか?」
チョウコクは敦子にそう言った。
「でもあなた三年じゃ・・・」
「私もケリつけたいからな。」
チョウコクはそう言うと
敦子の後ろについていた。
一人増えた前田軍団は
屋上へと向かった。

卒業式を終えたラッパッパは
全員部室に集まり
自然と決まっていた
それぞれの定位置に座っていた。
「そろそろ・・・かな。」
優子はそう呟いて
金色の椅子から立ち上がった。
それを見た
サドや四天王も立ち上がった。
「それじゃあお前ら行くぞ!」
優子は 笑いながらそう叫んだ。
四天王は何も言わずに頷くと
優子に一礼してから
部室を出て行った。
部室には優子とサドが残った。
「屋上で待ってっからな。」
「はい。」
二人はそう言って
一つ拳をぶつけ合った。
優子は部室を出て
ゆっくりと屋上へ歩いていった。
外は 晴天だった。

四天王のシブヤとトリゴヤが
廊下に立っているのを見つけ
敦子達は立ち止まった。
既に皮の手袋をはめていた。
敦子の前に
チームホルモンが出て来た。
「敦子は優子さんのトコに行け。」
ヲタがそう言って
敦子達を先に行かせた。
「ナメられたもんだよなぁ
こんなザコが相手なんて。」
シブヤはそう呟くと
右手を胸の前に出し挑発した。
「来いよ。」
それを見たホルモン達は
改めて気合を入れた。
「トリゴヤ。お前は下がってろ。」
トリゴヤを下がらせたシブヤは
両手を拳にして構えた。

階段の踊り場では
ブラックが待っていた。
ブラックは敦子達と目が合うと
すぐに敦子の目の前に立ち
一発殴ろうとした。
「敦子!」
そう叫んだ学ランが敦子の前に立ち
殴られた。学ランは殴られた直後に
ブラックの手首を掴んだ。
「俺が相手してやるよ・・・」
学ランはブラックを殴った。
ブラックは少しよろけた。
「敦子!早く行け。」
学ランにそう言われて
三人が階段を昇った。
「歌舞伎達も早く行け!」
学ランは後ろで笑っていた
歌舞伎シスターズに怒鳴った。
しかし歌舞伎シスターズは
笑っていた。
「そんなヘナチョコなパンチで
闘おうなんて思ってんの?」
「あ?」
「私達にもやらせなよ。」
「フザケンなょ・・・」
学ランがそう言いかけた時
大歌舞伎が腕を引っ張ると
ブラックの拳が空振りした。
「やっぱり
アンタ一人じゃ無理でしょ。」
歌舞伎シスターズが
そう言って笑うと
学ランも鼻で笑って見せた。

階段を昇りきると図書室の前に
ゲキカラが
爪を噛みながら笑っていた。
「今度は私の番か・・・」
そう呟いたのはチョウコクだった。
「みなみ・・・だったっけ?」
チョウコクはみなみを見た。
「敦子の事頼んだからな。」
チョウコクはそう言うと
ゲキカラを睨み
叫びながら向かっていくと
二人共図書室の中へと消えた。
「敦子!ぼやぼやすんな行くぞ!」
みなみは敦子にそう叫ぶと
二人並んでラッパッパの
部室への階段を駆け上がった。

部室の前には既に
サドが立っていた。
サドが睨んだ先は敦子ではなく
みなみのほうを見ていた。
みなみもそれに気付き
サドを睨み返していた。
サドは一度敦子のほうを見ると
人差し指を上に上げた。
「敦子。 優子さんは
とっくに屋上で待ってるぞ。」
そう言われた敦子は
みなみと目を合わせた。みなみは
黙って頷いた。敦子も頷き
屋上へと駆け上がっていった。
それを見届けたサドは
みなみに向き直った。
「じゃ。お前はこっちだ。」
サドはみなみを部室に入れた。

敦子が屋上へ着くと
強い太陽光に思わず目を閉じた。
優子はドラム缶の上で
寝そべっていた。
上がってきた敦子に気付いた優子は
体を起こしドラム缶から降りた。
「よ。待ってたぜ。」
優子は笑いながらそう言った。
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