BAD GIRL BLUES

□SERIES 3
9ページ/16ページ

『ひまわり』


ネズミが目を覚ますと
両手を万歳の形で吊り上げられ
顔中に痣と血が施された
サドの姿があった。
「お姉ちゃん・・・?」
ネズミの声に気付きサドが起きたが
猿轡をされていてくぐもった叫び声
だけが 聞こえた。そのうち
何処から覆面姿の男が数人現れた。
直後にサドは自身のベレッタで
腕を撃ち抜かれた。
サドは猿轡越しに悲鳴を挙げた。
「お姉ちゃん!!」
ネズミには目もくれずサドは
腹を殴られると猿轡を外された。
「・・・誰だテメエら?」
「お前の上司の大島優子
殺してこい。」
「あ?」
サドは男達を睨んだ。
「やって来い。」
「出来るか・・・」
「そうか。」
目の前の男が合図すると他の男達が
ネズミに頭から缶に入った液体を
掛けはじめた。液体の独特な臭いが
サドの鼻孔に突き刺さった。
「・・・ガソリン・・・」
目の前の男が
サドのジッポライターを取り出し
火を付けようとした。
「やめろ・・・やめろ!!」
「上司が死ぬかドブネズミが死ぬか
お前の選択肢は二つだ。」
「お姉ちゃんやめて!
私のことは構わないで!!」
「あいつがそう言うなら・・・」
ライターがネズミの方を向いた。
「・・・わかった・・・」
サドが呟くと
ネズミの眼が丸くなった。
「・・・お姉ちゃん?」
「お前の言う通りにする。
だから麻友に手を出すな。」
サドはそう言うと両手の縄が解かれ
地面に降ろされた。
「行って来い。忘れるな。
監視もつけてる。」
男はそう言ってベレッタとライターを
サドへ放り投げた。
サドはベレッタを拾い男へ向けた。
「いいのか?この状況で撃ったら
どうなるか分かるよな?」
男は笑っていた。
サドはベレッタを降ろした。
「さっさと行け。」
サドはベレッタとライターをしまい
立ち上がった。
「お姉ちゃんやめて!!」
ネズミが他の男達に
押さえ付けられながら叫んだ。
「優子さん殺したりしないで!!
代わりなら私がなるから!!
お姉ちゃん戻って来て!!」
サドは振り返らずに出て行った。
「イヤーッ!!」
ネズミが悲鳴を挙げると
男達は笑っていた。

サドは腕の銃創にハンカチを巻いて
上着を着ると一度深呼吸をしてから
署へ足を踏み入れた。
「サドさん!?」
ブラックがサドの顔を見るなり
こう口にした。
「・・・何でもない。」
「何でもないって・・・」
「優子さんは?」
「一服に・・・」
「そうか・・・」
サドはそう言うと
刑事課を後にした。喫煙室では
優子がタバコを吹かしていた。
サドは一度目を閉じベレッタを抜いた。
そして喫煙室のドアを開けた。
「サドどうした?」
優子が口を開いた瞬間
「すいません・・・」
と呟いて優子にベレッタの銃口を向け
引金を引いた。
「何やってんだ!?」
チョウコクが
サドの腕を捻り上げた。
「お前自分が何してんのか
分かってんのか!?」
チョウコクが怒鳴ると
ゲキカラと敦子が
腹から血が溢れている優子に
駆け寄っていた。
「・・・うるせえ・・・」
サドはチョウコクを振りほどき
走り出した。
「待て!!」
チョウコクがサドの後ろ姿に向け
グロックを抜いた時シブヤが
廊下の脇から飛び出してきた。
「やめろ!!」

優子に用事があり
喫煙室に向かっていたシブヤは
サドが歩いて行くのが見えた。
「サド?」
声を掛けようと
廊下の角を曲がろうとすると
サドが喫煙室の中へ入るのが
見えた。直後に銃声が聞こえ
シブヤは角に隠れた。すぐに
チョウコク、ゲキカラ、敦子が
駆け付けてきた。サドが出て来ると
チョウコクがグロックを抜いた。
その瞬間シブヤが飛び出した。
「やめろ!!」
シブヤはチョウコクに掴みかかり
グロックをもぎ取ろうとした。
「シブヤ何すんだ!?」
サドの姿が見えなくなると
チョウコクはシブヤを殴った。
「犯罪者を逃がしやがって・・・」
「サドは犯罪者じゃねえ!!」
「優子さんを撃ったんだぞ!」
シブヤはチョウコクを睨んだ。
「サドが何の理由もなく
そんなことするわけねえ。
何かあったんだ。」
「どうやって証明する!?」
「・・・私がやってやる。」
シブヤはチョウコクに頭を下げた。
「一時間でいい。
一時間だけ私にくれ。」
「何も無かったら
お前も逮捕するぞ。」
「わかった。」
シブヤは鑑識へと戻った。

サドは ひとしきり逃げ回った後
ネズミが監禁されている場所へ
戻った。
中へ入るとネズミが倒れていた。
拘束は解かれていた。
「麻友・・・」
サドが抱き寄せると
ネズミが目を覚ました。
「お姉ちゃん!」
ネズミの眼は焦点が合っていなく
顔の筋肉も緩んでいた。
「麻友?」
「お姉ちゃん・・・
なんだか体が熱い・・・」
ネズミは上着を脱ぎ
サドを押し倒した。
「どうしたんだ・・・?」
「あっついんだよー。」
ネズミはサドのブラウスのボタンを
外し始めた。
「麻友・・・やめろ・・・」
ネズミはサドの手首を
地面に押し付けた。
「お姉ちゃんもあついでしょ?」
「麻友!」
サドはネズミを押し返し
袖をまくった。
ネズミの腕に注射の跡があった。
その時男達が姿を現した。
「これから
楽しもうと思ったのに・・・」
「お前ら・・・麻友に何した!?」
サドは男達を睨んだ。
「疲れてるだろうから元気になる薬
ちょっと多めにね。」
「何・・・だと・・・」
サドは男達に向かって
飛び掛かろうとした。次の瞬間
サドは脚を撃たれ倒れた。
「手出さねえ約束だろ・・・」
「そんな約束守るバカ
どこにいんだよ!」
サドが腹を蹴られると
ネズミがサドに覆いかぶさった。
「お姉ちゃんあついよぉー!」
それを見た男達が笑みを浮かべた。
「じゃあお兄さん達が
楽にしてあげよう。」
「やったー!」
「やめろ・・・」
サドはネズミの首筋を殴り
気絶させた。
「麻友に手出すな・・・」
「何この女?キモ。」
サドは鉄パイプで殴られ
気を失った。
すると男達はサドとネズミの周りに
ガソリンを掛けはじめた。

男がライターに
火を付けようとした時
シブヤが飛び込んで来て
そのまま飛び蹴りをした。
「ウチのダチに何してくれてんだ?
カス共が。」
男が拳銃を取り出すと
シブヤは懐に手を入れた。
「撃ってみろ?ガソリンに引火して
全員死ぬぞ・・・」
シブヤは懐から
手製の小型ボーガンを抜いて
男の手の平に矢を突き刺した。
男が悲鳴を挙げると周りの男達に
ボーガンを向けた。周りの男達は
全力で逃げて行った。
一人残った男を見てシブヤは
ガソリン缶を手に取った。そして
蓋を開けると男の頭に掛け始めた。
「オラ!この水が好きなんだろ?
だったら好きなだけくれてやるよ!」
缶の中身が少なくなると
男の口に近付けた。
「サド遊んでくれた礼だ。
奢ってやるよ。」
「やめろ・・・」
「やめろ?」
シブヤは缶を放り投げた。
「あの二人がそう言った時
やめたのか?あ!?」
シブヤが男を蹴り飛ばすと
チョウコクがシブヤを止めた。
「もういいだろ。」
「うっせえな!このゴリラ!」
「こんなの殴るより
あの二人何とかしてやれ。」
シブヤはチョウコクを振りほどき
男を一度睨んだ。
「今度会ったら
テメエぶっ殺すからな。」
シブヤは佐江に連絡を取った。

サドが目を覚ますと
病院のベッドの上だった。
「・・・ここは?」
「見りゃわかんだろ。」
ベッドの傍らには
車椅子の優子がいた。
「なんとなく事情はわかった。」
優子はサドの額をつついた。
「一言ぐらい言えよ。いきなりだから
マジでビビったんだからな!」
「すいません・・・」
「急所外してくれてたから
良かったもののお前の処分の処理
スゲー面倒くさかったし。」
優子は車椅子から立ち上がり
棚から見舞いの菓子を手に取った。
「優子さん車椅子・・・」
「もういらねえし。」
「なんで乗ってるんです?」
「運転が楽しいのよコレが。」
「そういうことですか・・・
麻友は?」
「クスリ抜けるまで
しばらく入院だと。」
「そうですか・・・」
「シブヤに感謝しろよ。」
「・・・シブヤに?」
「居場所突き止めたのも
お前助けたのアイツらしいぞ。」
「そうですか・・・」
「まあ私は誰かさんのせいで
その場にいなかったから
よく知らねえけど。」
サドの顔が強張ると優子は笑った。
「冗談だよ。んじゃ私は帰っから。」
「わざわざどうも・・・」
車椅子を運転しながら優子は
「何を奢ってくれんのかなー?」
と鼻唄混じりに言い残した。

退院したサドは
ケーキを持って鑑識を訪れた。
「サドどうした!?」
ただひとり動いていた
佐江がサドに気付いた。
「シブヤは?」
佐江はソファの上に寝転がっている
シブヤを指差した。サドが近付くと
シブヤは起きた。
「わざわざどうした?」
「礼を言いに来た。」
「何のだ?
・・・コレは貰うけど。」
シブヤはケーキの箱を受け取った。
「ありがとな。
私と麻友助けてくれて。」
「お前助けたわけじゃねえよ。
涼子先生に
叱られたくなかっただけだ。」
「・・・そうか。」
「友達は大事にしろって
いつも言われてたから。」
シブヤが笑うとサドは笑い返し
鑑識課を後にした。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ