BAD GIRL BLUES

□SERIES 3
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『ヘビーローテーション』


サドが刑事課に戻って来ると
優子が椅子の背もたれに
背中を預けて眠っていた。
「・・・いつからだ?」
サドは優子に目を向けながら
ヲタに聞いた。
「30分ほど前から・・・」
ヲタの返事を聞いて
腕時計を一度見たサドは
小さく溜息を吐いた。
「許容範囲外だな。」
サドはそう言うとブラックを見た。
「ブラック・・・キックだ。」
頷いたブラックは
サドにiPodを渡した。
サドは一度
イヤホンを自分の耳に当てると
通常の音量のままリストの中から
『ヘビーローテーション』
を選んだ。
それから一度[再生]を押し
『1、2、3、4!』
と聞こえた所で[一時停止]を
押した。それから音量を
最大まで上げると優子の耳に
イヤホンを差し込み
ゆっくりと椅子を後ろに傾け
右足だけで支えた。
少し間を置いてから再び
[再生]を押した。
イヤホンから漏れてきた
音楽とともに
優子が目を覚ました瞬間
サドは足を離した。
「ウォワーッ!!」
優子は叫び声を挙げながら
床に倒れた。
「な、なんだ!?」
優子が慌ててイヤホンを外し
周りを見るとサドが
iPodをブラックに返していた。
「・・・またかよ・・・」
優子は呆れ気味に頭を掻いた。
「人が気持ち良く寝てんのに・・・」
「仕事中に
気持ち良く寝ないで下さい。」
「起こすなら
普通に起こしてくれよ・・・」
「懲罰込みですから。」
サドが笑ってそう言うと
優子は黙って立ち上がり
椅子を直していた。





『夢魔』


−−
優子に案内され
霊安室のドアを開けると
目を閉じたネズミが眠っていた。
部屋の中には
線香の匂いが漂っていた。
「麻友・・・」
そう言いながらネズミに近寄った。
「暴漢に襲われたらしい・・・」
背後の優子がそう言った。
「麻友もういいよ・・・」
「・・・サド?」
優子の目が丸くなった。
「お姉ちゃん驚いちゃった。
こんな部屋借りちゃって
凄いドッキリだね。
騙されちゃったよ。」
「サド何言ってんだ・・・?」
「もういいでしょ麻友。
早く起きなよ。」
サドはネズミを見ながら
笑っていた。
「ほら麻友早く起きて。
風邪引いちゃうよ。」
ネズミの体を起こそうとした
サドを優子が止めた。
「サド止めろ!」
「だって麻友が起きないから・・・」
「ネズミはもう起きねえ。」
「何言ってんですか優子さん?
麻友はただ・・・」
「ネズミは死んだんだ。」
「・・・バカな事言うな!」
そう言うと優子を振り払い
壁にたたき付けて首を絞め始めた。
「麻友が死ぬわけねえだろ!!」
優子が顔を歪めながら口を開いた。
「・・・お前が・・・」
「あ!?」
「お前が殺したんだろ・・・」
「何だと・・・」
「目撃情報がある。
犯人の特徴がお前と一致してる。」
「・・・違う・・・」
「嘘つくな。お前だろ?」
「違う!私が麻友を殺すわけ・・・」
「妹殺して満足か?」
優子にそう言われながら
顔をネズミに近付けられた。
「ネズミに謝れよ。」
「違う・・・私じゃない・・・」
「謝れ!」
「違う!!私じゃない!!私は
絶対に麻友を殺したりしない!!」
−−

「・・・ちょっとお姉ちゃん!」
ネズミが
眠っているサドの体を揺すった。
「・・・麻友!生きてたの!?」
「ひど・・・」
「よかった・・・」
「抱き着かないで!寝汗が・・・」
「私じゃないよね!?
私がやったんじゃないよね!?」
「・・・疲れてんの?」
「え?」
「とりあえず
シャワー浴びてきたら?」
「・・・夢・・・か・・・」
サドは大きく息を吐いて
ベッドに体を倒した。
「早く準備してよね。」
「え?」
「久々の休暇だからデートしよう
って言ったのお姉ちゃんじゃん。」
「・・・そうだったね。
すぐ準備するから。」
サドはそう言うと
シャワーを浴びに向かった。





『強盗』


コンビニ強盗の通報があり
優子達は現場へ向かった。
「状況は?」
優子は現場に着くと
先着していたブラックとヲタに
話を聞いた。
「犯人二人に人質が三人。
犯人の一人は人質達に
説教してるみたいです。」
「説教?」
「政治家がどうとか
カレーがどうとか・・・」
「カレーって・・・
まさか犯人はサド!?」
優子が振り返ると
サドはベレッタを抜いていた。
「あなたを犯人の一味として
逮捕しましょうか?」
「冗談だよ。」
優子はブラックの説明に戻った。
「犯人は二人共
拳銃で武装してます。」
「拳銃の種類は分かるか?」
「9ミリの小型の拳銃です。」
「・・・多分マカロフだろう。」
チョウコクが口を挟んだ。
「ソッチ関係の銃では最近
トカレフに代わって台頭していますが
威力は若干弱いです。」
「そうか。じゃ、ヲタ行け。」
「は!?」
「防弾チョッキ着りゃ防げるだろ?」
「まあ・・・ある程度は。」
「だそうだから。」
「な、なんで私が?」
「ヘタレ克服チャーンス!」
優子は笑ったが
ヲタは必死に首を横に振った。
「なんだよ・・・ノリ悪いな。」
「ノリで死にたくないです!」
「・・・ったくしゃーねーな。」
優子はサドとチョウコクを見た。
「回り込むのにどのくらい掛かる?」
「まあ・・・二分くらいですかね。」
「それじゃ
私達は今から三分後に突入する。」
「「はい。」」
二人が走り去ると
優子はヲタを見た。
「聞いてたろ?」
「・・・やっぱり私もですか?」
「心配すんな。
ちゃんと私とブラックもいるから。」
「はあ・・・」
「んじゃ今から作戦説明すっから。」

三分後優子とブラックは
正面から入った。その瞬間
犯人の二人はマカロフを向けた。
「何だテメエら?」
優子はバッジを見せた。
「警察。そのくらいは察してよ。」
「何の用だよ!?」
優子は人質達を見た。
「今から一分程
目を閉じてて下さいね。」
「無視すんなよ!」
人質達が目をつぶると
優子は改めて見た。
「今のうちに諦めない?」
「フザケンな!
人質がどうなってもいいのか?」
人質達にマカロフを向けた。
「分かったよ・・・要求は?」
「逃走用の車用意しろ!」
優子はブラックを見た。
ブラックが頷くと
優子は犯人を見た。
「・・・要求は飲む。
今すぐ車用意する。」
優子がそう言った瞬間搬入口から
サドとチョウコクが飛び出し
それぞれ犯人のマカロフを
撃ち抜いていた。次の瞬間
優子とブラックが拳銃を抜いて
それぞれ犯人一人ずつ
照準を向けた。
「車は逃走用じゃなくて
護送用だけどね。」
優子が犯人に告げると
ヲタが入って来て
人質達を解放していた。
「次やる時は
私達の管轄は避けるんだな。」
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