BAD GIRL BLUES

□SERIES 3
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『誘拐』


優子達は
娘が誘拐されたという通報で
臨場した。
誘拐されたのは父子家庭で
会社の社長で秘書兼任の娘だった。
優子達が逆探知などの機材を
設置した直後電話が鳴った。
相手は予想通り犯人だった。
機械のような声で
犯人は用件だけを言って来た。
『身代金は五億。場所は駅東口。
時間は12時間後の午前10時。
茶色の鞄に金を詰め込んで
篠田麻里子という刑事に一人で
運ばせろ。妙な真似をすると
人質の安全は保証しない。
そう言って電話は切れた。
「何で私が?」
サドが思わずそう呟くと優子も
「知らねえよ・・・」
としか言えなかった。

夜が明けてサドは金の入った
鞄を持って取引場所へ向かった。
サドは事前の電話で
ケータイの番号は教えてあった。
優子達も周りで張り込んだ。
10時近くになりサドのケータイが
非通知で鳴った。
『取引は中止だ。』
「何!?」
『一人で来いと言ったろ。』
「一人で来たろ!」
『駅前オープンカフェ。
一番手前の二人。』
犯人は優子と敦子が座っている
場所を口にした。
「何を言ってる・・・」
『背後の立ち食いそば屋にも
二人。』
そこには
ブラックとゲキカラがいた。
『近くのベンチにも
一人座ってるね。』
サドはそこにいたチョウコクと
目が合った。
『それじゃあまたいつかね。』
そう言って電話が切れた後
すぐ近くを歩いていた
ヲタの右腕から血が噴き出した。
「ヲタ!!」
サドは慌ててヲタを抱き上げた。
ヲタは腕を押さえながら
サドに聞いた。
「サドさん・・・?」
サドは辺りを見回したが
怪しい人影は見えなかった。

右腕を吊られたヲタが
病院から戻ってきた。
刑事課の空気はひどく重かった。
「取引は中止って
どういうことですか?」
「私達が張ってるのがバレてた。」
ヲタの問いに優子が答えた。
「どうしてですか?」
「知るかよ・・・」
その時サドのケータイに
再び非通知で電話が入った。
『チャンス欲しいですか?』
機械じみた声だった。
『一時間後に公園のベンチに
座ってて下さい。今度はご内密に
お願いしますよ。』
そう言って電話は切れた。
サドはケータイの電源を切ると
立ち上がった。
「どうしたサド?」
優子が聞いた。
「ちょっと麻友に用が・・・」
サドがそう言い残し出て行くと
シブヤが入って来た。
「何すか用って。」
優子は
ポストに入れられていたという
誘拐された娘の写真を渡した。
「コレちょっと調べてくれ。」
「いいっすけど・・・」
渡された写真の娘には
殴られたような痣が付いていた。
「何でまた?」
「なんかちょっと引っ掛かる・・・」
「引っ掛かる?」
「流れが良すぎんだよ。」
「どういう事です?」
近くにいた敦子が聞いてきた。
「だって身代金の電話が
夜の10時だぞ。
そっから大金の用意なんて
難しいことぐらい
普通は分かるだろ?」
「言われてみれば・・・」
「でも金は用意出来た。
それに顔も分かんねえのに
よく私達の張り込みに
気付いたよな。」
「・・・それで優子さんが
今考えてる事って何です?」
敦子は改めて聞いた。
「今回の誘拐・・・
嘘なんじゃねえかなって。」
「狂言誘拐・・・って事ですか?」
「ちょっと可能性が
浮かんだだけだ。」
優子がそう言った頃には
シブヤは消え入れ代わるように
ネズミが入って来た。
「お姉ちゃんに手伝ってくれ
って言われてきたんだけど・・・」
「・・・サドならさっき
お前に用があるって言って
出てったぞ。」
「・・・何の?」
「何のって・・・
さっき電話で話してたろ?」
「私・・・ 今日は電話してないよ?」
そう言うと優子は固まった。
「マジか・・・?」
「うん・・・」
「じゃあ・・・
サドはどこ行ったんだ?」
優子がそう呟いた時ブラックが
「身代金の鞄が消えてる!」
と叫んだ。

サドが言われた場所に座っていると
どこかからネズミの声で
「お姉ちゃーん!?」
そう聞こえてきた。
「麻友?」
辺りを見回すと公園の入口の所に
ネズミの姿が見えた。
ネズミがサドの姿に気付いた直後
背後に黒いバンが停まった。
それからすぐにスライドドアが開き
麻友を引きずり込んでいた。
それを見た瞬間サドは
「テメエら何してんだ!?」
そう叫びバンのほうへ走っていた。
しかしバンの中から飛んできた
銃弾がサドの左腕を撃ち抜いた。
「お姉ちゃん!!」
ネズミはそう叫んだ後
バンの中へ押し込まれ
ドアが閉まるとバンは走り出した。
「待て・・・」
サドは血が流れ始めた左腕を
押さえながら後を追い掛けた。
入口から道路に出た時には
バンはすぐ近くの角を
曲がろうとしていた。
急いでベレッタを抜いたが
バンは角を曲がっていた。
「サド!!」
ベレッタをしまった頃
優子がサドに追いついた。
「大丈夫か!?」
「なんとか・・・」
サドはそう言いながら
ハンカチで銃創を止血した。
「早く病院に・・・」
「大丈夫です・・・」
サドはそう言うと
バンが消えた方へ歩き出していた。
すると優子の電話が鳴った。
「もしもし・・・
ああブラックか・・・どうした?」
『シブヤから結果が来ました。
・・・ビンゴです。』
「そうか・・・ ありがと。」
優子はそう言って車に乗った。

サドがネズミを乗せて行ったバンを
倉庫の前で見つけると中へ入った。
「やめて!離して!!」
中を進むと
ネズミの悲鳴が聞こえてきた。
悲鳴の聞こえてきた所へ行くと
ネズミが押し倒され囲まれていた。
「テメエら・・・」
睨みつけたサドに
男達が向かってきた。
男達を倒した頃銃声が轟き
近くの壁に火花が散った。
サドは反射的にベレッタを抜いた。
向けた先には
誘拐された娘が立っていた。
「誘拐されたんじゃ無かったのか?」
「狂言誘拐ってヤツよ。
パパにも手伝だってもらってね。」
「そうか・・・」
「銃捨てて。」
「お前が先だ。」
「あの子が死んでもいいの?」
娘がネズミに拳銃を向けると
サドは笑った。
「やってみろよ。倍返しだぞ。」
「お姉ちゃん!私に構わないで!!」
「麻友、心配するな。
命賭ける相手じゃない。」
「・・・ホントに撃つよ。」
「素人が片手で撃って
当たるわけねえだろ。」
「そんなの分かんないよ?」
「上等じゃねえか。
・・・やってみろよ。」
サドはベレッタを両手で持った。
その時優子が
娘の後頭部に銃口を向けていた。
「それ以上挑発すっと
お前マジで殺されるぞ。
橘亜美さん。」
優子がそう言うと
亜美と呼ばれた娘は固まっていた。
「・・・騙したの?」
「先に騙したのはそっちだろ。」
優子が亜美から拳銃を没収すると
サドはベレッタをしまった。
「あなたの事調べましたよ。
養子の件も
実の親御さんの事も・・・」
「アンタらに何がわかんの!?」
亜美が声を荒げた。
「アタシから全部奪ったくせに!」
そう言っている亜美に
優子が手錠を掛けると
サドはネズミの傍にいた。
「帰るぞ麻友。」
「うん・・・」

優子が亜美を
署に連れて帰るとサドも
ネズミを事務所へ連れて帰った。
「今日はこのまま帰りますから。」

「サド・・・ お前知ってたろ。」
翌日サドに優子が聞いてきた。
「何をです?」
「あの亜美って人がお前が昔逮捕した
詐欺師の手塚昭の娘だってこと。」
「・・・まあ。思い出したのは
ヲタが撃たれた後ですけど。」
「だから一人で行ったのか?」
「・・・だから?」
「自分の事は自分で片付けるため。」
「そんなカッコイイ理由じゃ
無いですよ。優子さんこそ何で
あの場所が分かったんです?」
「写真だよ。」
「写真?」
「誘拐されたって渡された写真だ。
シブヤに調べてもらったら
あの痣は化粧。ついでに背景から
場所も割り出してくれた。」
「そうですか。」
「しかしまああの親父さんも
義理なのに
犯罪の片棒担ぐとはな。」
「義理の弟逮捕されてそれが元で
手塚妻である妹自殺されたら
そうなるんでしょうね。」
「・・・憎しみは警察に来るか。」
「あの二人もヲタの顔は
知らなかったんでしょう。
手塚を逮捕した時は
まだ配属されてなかったし
通報当日と取引の日は
別件捜査でしたしね。」
サドがそう言うと優子は
ヲタを横目で見ると苦笑いをした。
「運の悪さが光ったな。」
「たまたまあの場にいて
たまたま見つけた
私に声を掛けようとしたら
流れ弾が当たったんですからね。」
「あれにはビビッたな。」
優子がそう言うとサドも笑った。
「まあでもヲタのお陰で
一般人には当たんなかったのは
不幸中の幸いですかね。」
「そんなとこだな。」
視線に気付いて顔を向けたヲタに
優子は小さく手を振った。
ヲタは首を傾げた。
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