BAD GIRL BLUES

□SERIES 3
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『証明』


サドのケータイに
ネズミから電話が掛かってきた。
「もしもし麻友どうした?」
『お姉ちゃんって
百瀬俊二って人追ってる?』
「ああ。それがどうかしたか?」
『お姉ちゃん
もうすぐ誕生日だよね?』
「どうしたいきなり?」
『誕生日プレゼントに
その人捕まえてあげる。』
そう聞いた時サドは固まった。
「ま・・・麻友・・・
何言ってるかよく・・・」
『さっき言った通りだよ。』
「冗談はよせ・・・」
サドがそう言うと
ネズミは笑って電話を切った。
「麻友?おい麻友!!」
「ネズミがどうかしたか?」
「麻友が・・・麻友が殺される!」
サドはそう言うと
飛び出していった。
「サド説明しろよ!
意味がわかんねえ!!」
そう叫んだ時
優子のケータイが鳴った。

人気の無い所に入ると
「百瀬さん!」
その声に気付いて振り返った百瀬に
ネズミがすりとった財布を渡した。
受け取った財布を見ながら百瀬は
「名前は免許証見たんですか?」
と聞いた。
「いやいや・・・
殺人犯の名前ぐらい
知らない人間じゃないんで・・・」
ネズミがそう言った時
百瀬は溜息を吐いて
「サツか・・・」
と呟いてネズミに抱き着きながら
腹にナイフを刺した。
顔を歪めて腹を押さえながら
うずくまったネズミを見ながら
百瀬は笑った。
「あのデケえ女刑事に言っとけ。
バカは損するって。」
そう言った百瀬を
ネズミは殴っていた。
「お姉ちゃんはバカじゃない・・・」
そう言ってもたれかかった
ネズミを倒すと
百瀬はネズミの傷口を踏んだ。
「汚い血付けんなよ。」
そう言った百瀬が
立ち去ろうとした時
ネズミは足首にしがみついた。
「絶対逃がさない・・・」
「離せよ!」
ネズミは首を横に振ると
しがみつく腕に力を込めた。
「殺してやろうか?」
百瀬がそう言って
ネズミの背中の真ん中目掛けて
ナイフを振り下ろそうとした時
サドが百瀬の顔に飛び蹴りを
めり込ませていた。
「麻友殺す前にテメエ殺してやる。」
倒れた百瀬にサドが吐き捨てた。
気絶している百瀬に
優子が手錠を掛けると
サドはネズミを抱き上げていた。
「麻友しっかりしろ!!」
そう叫びながら
ハンカチを傷口に当てると
ネズミは青ざめた顔で笑った。
「どう?・・・
私からの誕生日プレゼント・・・
喜んでくれた・・・?」
「何考えてんだよ・・・」
それには答えず
ネズミは気を失った。
「麻友?・・・麻友!?
目開けろ!麻友!!」
頬を叩いたが
ネズミは反応が無かった。
「お願いだから目開けて・・・
プレゼントなんて
いらないから・・・
お願い・・・麻友・・・」
「サド!!泣いてる暇あったら
ネズミを早く病院運べ!!」
サドはネズミの胸に顔を埋め
泣いたまま固まっていた。
「サド!!ネズミを殺すな!!
早く行けっつってんだろ!!」
「は・・・はい!」
サドは慌てて車に乗り込むと
サイレンを鳴らして
アクセルを踏み付けていた。
「バカが・・・こんなプレゼント
サドが喜ぶわけねえだろ・・・」
優子はそう呟くと
チョウコク達を呼んだ。

サドは救急救命室のドア窓から
治療をずっと見ていた。
「麻友・・・」
そのうちにネズミへ
電気ショックが始められると
サドは近くの椅子に座って
泣き出していた。
「麻友・・・ゴメン・・・
私が全部悪いんだ・・・」

優子がサドの下に走って来た。
「ネズミは?」
「わからないです・・・」
「そう・・・か。」
優子は横に座った。
「私のせいだ・・・」
「は?」
「私が刑事になったばっかりに
麻友は・・・麻友は・・・」
「サド落ち着け・・・」
「優子さん・・・ 私・・・
刑事辞めます・・・」
「は!?」
「これ以上麻友を危険な目に
遭わせたくないんです・・・」
「おい何言ってんだよ・・・
辞めてどうすんだよ?」
「わかりません・・・でも
麻友を危険から遠ざけたい・・・」
「とりあえず・・・
今はネズミの側にいてやれ。」
「私にそんな資格無いです・・・」
サドは頭を抱えて震えていた。
「私は
麻友の側にいちゃいけない・・・」
「サド・・・?」
「麻友にとって私は
死神なんです・・・」
「違う・・・」
優子はサドの眼を見た。
「お前はネズミに・・・
麻友にとって
たった一人の姉なんだ。
世界に一人しかいない家族なんだ。」
「でも・・・」
「ずっと側にいるって
約束したんだろ?
お前が守るんだろ!?」
「でもこのままじゃ・・・麻友に
迷惑掛けてばっかなんて・・・」
「この世に迷惑掛けない人間なんて
いないんだ。それにネズミだって
危険を承知でお前の側にいるんだ。」
優子はそう言うとケータイを開き
一通のメールを開いた。
「お前が出てった直後に
ネズミから届いた。」
サドはメールを読んでみた。
『優子さん多分私が死んだら
お姉ちゃんは警察辞めようとする。
だから一生のお願い!
その時はお姉ちゃんを
絶対に引き止めて。
だって私なんかのために
お姉ちゃんの笑顔を
失いたくないから・・・』
その文のあとに警察バッジを持って
笑顔を浮かべているサドの写真が
添付されていた。
「なんかって何だよ・・・
私は麻友に逢う資格なんか・・・」
「家族に逢うのに
資格はいらねえだろ。」
優子はそう言って笑ってみせた。
「そんな笑顔出来るんだな・・・」
「麻友・・・」
サドは優子のケータイを握り締め
泣き崩れた。
「辞めんなよ・・・」
その時治療室から医師が出て来た。
「先生麻友は!?」
「もう大丈夫です。」
サドはその言葉を聞くと
その場にへたり込んだ。
「よかった・・・」
サドは改めて医師を見た。
「先生・・・
ありがとうございます・・・」
サドが頭を下げると麻酔で眠る
ネズミが 出て来た。
「麻友。大丈夫だからな・・・
お姉ちゃんがついてるからな。」
そう言いながらネズミの手を握って
一緒に去っていったサドの
背中を見て優子は笑顔を浮かべた。
「心配すること無かったか。」

ネズミは目を覚ますと
サドと目が合った。
「お姉ちゃん・・・」
「麻友・・・」
「刑事辞めないよね・・・?」
「大丈夫だ。」
サドがそう言うと
ネズミは泣き出した。
「麻友!?」
「お姉ちゃんゴメンね・・・
あんなプレゼントで・・・」
「気にしないでいいよ。」
「だって・・・だってアイツ・・・
お姉ちゃんのこと
バカだって笑ったから・・・」
「・・・ありがとうな。
代わりに怒ってくれて。」
「私・・・役に立った?」
「ああ。」
ネズミは泣きながら笑った。
「よかった・・・」
「もう大丈夫だから
ゆっくり休みな。」
「うん・・・」
ネズミが頷くとサドは
病室から出ようと立ち上がった。
「お姉ちゃん・・・」
「ん?」
ネズミに引き止められ
サドは振り向いた。
「誕生日の日には
もっとちゃんとしたプレゼント
あげるから。」
「楽しみに待ってるよ。」
サドは笑って手を振ると
病室から出た。
病室の外に優子が待っていた。
サドは優子と目が合うと
頭を下げた。
「この仕事・・・
またやらせて下さい。」
「また。じゃねえだろ。
ずっと刑事だろ。」
「・・・はい。」
「じゃ戻るぞ。
まだ仕事は残ってる。」
「はい。」
サドが敬礼すると
二人は署に戻った。
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