連載駄文

□赤い石の軌跡 (裏)
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キスが止まらなかった。







八年分を取り戻すように、アスランは愛しい彼女にキスを送り続けていた。

肩下より伸びた柔らかな金の髪に、
そっと閉じられた瞼に、
長い睫毛に、
陶器のような頬に、
桜色の唇に…


「…っ」

口付けた後、あまりにふっくらと触り心地の良いその唇を親指で往復すると、閉じられていた瞼を開けて琥珀色の瞳がアスランをゆっくりと捉える。

まずいな、とアスランは思う。

艶っぽく上気した頬と潤んだ瞳がアスランの背筋をぞくりと震え上がらせる。
ここはアスハ家の客間。ここで止めなければ…、頭ではそう思うのだが、体にその指令が伝わってくれないのだ。

「カガリ…」

うわ言のようにその名を呟いて、自由に動く体はカガリを深く求めていく。

カガリの上唇と下唇を軽く喰んで、舌先をゆっくりと擦り付ければ、閉じられていた小さな口がアスランを誘い込むかのように開く。
すかさずアスランの舌はその隙間をかいくぐって遠慮がちなカガリの熱い舌を絡め取り、手は自然と彼女の服の上から、なだらかな曲線を描く腰と背筋を往復する。

「ん…っ、駄目」

カガリは漸く制止の言葉を紡いだ。これからアスランが望もうとしていることを理解したのだ。

「アスラン…駄目だって…」

ストップをかけられてもなお蠢くアスランの手を気にかけながら、カガリは二度目の制止をかける。

「うん…わかってるけど…」

わかってるけれど、止まらないのだ。
八年焦がれ続けた存在が目の前に在って、どう止めろというのか。
何度夢見たことだろう。カガリに触れて、キスを交わし、抱きしめて…。けれどいつも夢の中のカガリは腕の中からすり抜けて行くのだ。至福の夢から悪夢へと変わる瞬間に何度目を覚ましたことか。
もしかしたら今この時だって夢なのかもしれない。
そう思うと怖くてたまらなくなり、続きを、続きをと急く自分がいるのだ。
そうしてついに、アスランはカガリのTシャツの裾から手を差し入れて、滑らかな背中を堪能しはじめた。


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