連載駄文
□混血天使ー灰色の翼ー
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『ねぇ、おかあさま。どうしてカガリのはねは、おかあさまとも、みんなともちがうおいろなの?』
『ごめんね、カガリ…。ごめんね…』
母はいつも静かに泣いていた。
こんな羽いらない!
こんなくすんだ色じゃ、自由に飛ぶ事さえできない。
こんな羽!
こんな羽!!
こんな……
こんな私なんて消えてなくなればいいのに……
【混血天使ー灰色の翼ー】
遥か昔、神が創られしこの天上界。
楽園とも呼ばれるそこは夜の訪れる事のない光だけの世界。
そこに住まうは天使と呼ばれる神の使いたちのみ。
彼らは背中に二枚の白い羽を生やし、頭上には光輝く輪を浮かせて地上に住む人間たちに愛を授け、又、人間や天上界そして神にさえ牙をむく悪魔たちを聖なる力で抑えこんでいた。
「見て‘‘カガリ’’よ…。」
「やだ、せっかくのお清めなのに、あの子が来たんじゃ汚れてしまうわ」
「早くローブを纏ってここを出ましょう?お清めにはまた後で来ればいいわ」
「まったく…あの子お清めなんて必要あるのかしら?どんなに清めてもあの子は一生穢れたままなのに」
「おしゃべりは後よ!行きましょう」
二人の天使は急いでローブを纏うと‘‘カガリ’’に蔑んだ視線を送りながらそそくさと立ち去っていった。
「……………」
少女はそんな者たちに目もくれず、静かにローブを脱ぎ去り透き通る水へと身を沈めた。
神が特別な力を込めて造った泉。
天使たちは毎日ここで身を清めることが義務づけられている。
そしてここは大衆向けの泉ーーつまり神の使いの中でも最下級の天使たちが身を清める泉であって、他にも天使の階級ごとに清めの泉は存在する。
彼女はここが好きではなかった。
いや、ここだけではない。
天上界そのものに嫌気がさしていた。
物心がついた時から周りは異質な彼女を差別し見下し、除け者にし続けてきた。
幼い頃はわけもわからず嫌われる事に幾度となく涙を流してきたが、今では眉一つ動かす事さえ無くなった。
なぜならそれが日常だから。
彼女、カガリのーー、
天使と堕天使の子…禁忌とされる灰色の羽を持つ混血天使の宿命なのだ。