連載駄文

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暗く深い水底に一筋の光。



君は俺に地上へと続く明かりを照らし続けてくれた人ーーー大切な義妹。





君に恋をする事は禁忌。







けれど君からの免罪符を手に入れた時、
この思いは激しさを増したーーー







『忍ぶれど、恋は激しく。』








「こっち向いて…」


「だめ……」


リビングに置かれたL字型のソファに、若い男女が密着して座っている。
広いこのソファに空きは当然のごとく存在し、不自然な寛ぎ方をするこの二人の関係を露わにしていた。


「だめだ…ってば!アスラン!」


「大丈夫…。まだ帰ってきやしないよ」


アスランと呼ばれた少年は相手の項に顔を埋めながら、手探りでテレビのリモコンを探し当て、電源を切る。


「これで足音も聞こえやすくなるよ」


「んっ…だめ……」


「お願いカガリ…少しだけ…」


「………っ」


逃げるように背を向けていたカガリが振り向くと、切なく揺れる翡翠の瞳が心に突き刺さる。


自分を欲する美しい瞳に、背筋がぞくりと粟立つ。


「だ、だめ…」


自分に言い聞かせるように、制止の言葉を紡ぐカガリの飴色の瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。

その涙をアスランが舌で拭いながら問う。


「どうして?」


「どうして…って、、、」



そんなもの、二人ともとっくに分かっている。


理解した上で、侵したのだ。禁忌をーーーー





「君が俺の妹だから…?」


「や、やめろよ!聞きたくない!!」


妹。その言葉を聞いた途端にカガリの声が荒くなる。


「…血は繋がってない」


対象的にアスランは静かに事実を紡ぐ。



「…でもっ!」



ーーー五年前。

不慮の事故で両親を失ったアスランは天涯孤独となってしまった。

まだ十二になったばかりだった。

大手企業の代表取締役だった父の遺した遺産を巡って、親族たちはこぞってアスランを引き取りたがった。
そんなどす黒い欲望が渦巻く中で、アスランは幼いながらも必死に弱みを見せまいと、親族とそして己と戦い続けた。

金の亡者達が、一人の少年を巡って繰り広げる惨劇を見兼ねたウズミ・ナラ・アスハーーカガリの実父、そしてアスランの父の親友ーー
がアスランに手を差し伸べ、
二年もの裁判の後、アスランを養子に迎える事となった。
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