頂き物

□月の涙、宵の愛
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逃げ惑う人々。城へ攻め入る敵軍の兵士たち。

「王の首は俺が取った。君が愛したオーブは、我がプラントのものとなった」

私にそう告げたのは、敵軍の総大将であり、私の元婚約者だった。










月の涙、宵の愛










オーブ城が落城し1週間が経った。生き残ったオーブの王族は男は処刑、女はプラントの貴族の元へと降嫁することになった。王女という立場であった私は、軽く身支度をさせられ馬車に乗り込み、プラント王都にある屋敷に連れてこられた。

無駄に広い寝室。無駄に広い寝台。無駄に質の良い調度品。それらから、この屋敷の主がかなり高い身分の貴族だということがわかる。

この屋敷に連れてこられ、執事や侍従に簡単に挨拶を済ませた後、食事をしてから侍女達に念入りに湯あみをされ、質は良いが生地の薄いレースが施された夜着へと着替えさせられた。

寝台の端に腰掛け、窓から見える星を眺める。オーブとは星の流れの違う空。それは嫌でもここが慣れ親しんだ祖国ではないと思い知らされた。

「何を考えている?」

人の気配と共に声がした。だが私はその声が誰のものなのかわかっていたため、視線を窓から変えることはなかった。

「何も。ただ星を眺めていた」

「そうか」

私の言葉にそう呟いた彼は、私の横に腰を落とす。寝台のスプリングが彼の重みにより少し軋んだ。彼はこの屋敷の主であるアスラン・ザラ。王弟である彼は王位継承権を放棄し臣へと下り、公爵の位を得た貴族である。彼は臣に下る前から軍に属し、その名を馳せていた。戦の指揮を取れば敵軍は瞬く間に壊滅、剣を握れば、その剣技は他を圧倒する。“プラントの剣聖”。それが彼の二つ名である。

オーブ侵攻の総大将として指揮を執っていたのも彼だった。オーブは瞬く間に王都まで侵攻を許し、城まで攻め込まれ、城は落城。そして私の父であるオーブ国王の首を彼が取ったことにより戦は終焉を迎えた。

「こんな形で君を娶りたくなどなかった・・・。君は俺を恨んでいるか?」

どこか悲痛な面持ちで、彼は言葉を発した。1年ほど前まで私たちは婚約者という間柄だった。隣国である友好国の王子と王女であった私たち。婚姻は生まれた時から決められていた。私が18の誕生日を迎えると同時に輿入れをする予定だった。しかし18歳の誕生日を目前に控えた1年前、オーブ国王のプラントへの突然の宣戦布告により、私たちの婚約は破棄された。

「終わったことだ。今更何を言っても意味がない」

その言葉に私は漸く彼へと視線を向ける。

「俺は今日、君を抱かなければならない。君の降嫁は王命だ。逆らうことは出来ない。明日、君の破瓜の証を王へと提出する」

「そして私は王女としての位を正式に廃され、二度とオーブの土を踏めなくなるということだろう」

淡々と告げる私に、彼の顔が苦痛で歪んでいくのがわかった。

「すまない」

どうして謝罪などするのだろう。もとはと言えば、父であるオーブ国王が宣戦布告をしたことが戦争の始まりだった。そして彼は王命に従い、任務を全うしただけ。それなのに何故、謝る必要があるのだろう。

気が付けば、眼前に彼の顔が近づいていた。エメラルドの瞳には、哀しみと、情欲が滲み見える。あぁ、私は義務として抱かれるのか。そう思うと同時に、私の胸を鈍い痛みが貫いた。

互いの唇が重なる。初めは何度か啄むような口づけを繰り返し、それは次第に深くなっていく。“ん・・・”という私の鼻にかかった声を合図に、彼の舌が強引に私の口内に入ってきた。歯列をなぞられ、口蓋を舐られ、舌を執拗に絡められる。下唇を強く吸われ、彼の唇が離れた。銀の糸が互いの唇を繋ぐ。それが途切れると同時に寝台へと優しく押し倒される。私を見下ろす欲を孕んだエメラルド。それは長年見てきた彼の初めて見る顔だった。欲を孕む男の顔。体の芯が疼くのがわかった。

「すまない・・・。もう、止められない」

一瞬苦い顔をした彼は、触れるだけの口づけをし、首筋へと顔を埋める。同時に私の夜着の前紐を解き、肌を暴く。露わになった私の胸は彼の武骨で繊細な手により揉まれ、首筋に埋められていた顔が舌を伝い次第に下に降りてくる。もう片方の胸を捉えた彼の舌は乳輪を舐め回し、乳首をきつく吸われ、もう片方も指で抓まれる。

「あぁんっ・・・!」

強い刺激に声が出てしまい、咄嗟に口元を手で覆う。すると彼は顔を上げ私を優しく見下ろす。下肢の疼きと潤みが増す。背筋を言いようのない感覚が走る。

「声、聴かせてほしい」

言葉と同時に口を覆っていた手をやんわりと寝台に縫い付けられる。再び首筋に顔を埋め、彼の手が脇腹、下腹部、太腿と撫でながら下りて行けば、その手は私の未開の部分に到達した。

「いっ・・・!」

秘所へと挿ってきた指の圧迫感と違和感、少しの痛みに声が上がる。

「痛い?」

そう問われ、小さく頷くと、首筋から彼の顔が下へと降りていく。何をするのだろうと少し不安に思っているうちに彼の顔は私の下肢まで下りており、太腿を掴んだ彼はそのまま大きく開かせた。

「え?・・・あぁ!」

彼の舌が秘裂をなぞる。丹念に舐められるそこに潤いが増していく。はぁはぁと荒いと息が木霊する。秘所の中に舌のザラりとした感覚が挿れられるたびに、喘ぎ声が上がる。与えられる快楽に、脳がしびれ、思考が遮られる。そしてぷっくりと熟れた肉芽を彼の舌が捉えた。

「ああああぁん!」

今までにはない強い刺激が脳天を直撃する。彼の舌はそのまま肉芽を舐り、吸い、舌で弄ぶ。

「あっあっあっ・・・」

肉芽を舌で弄びながら、指が秘所へと入ってくる。十分に潤んでいたそこは、彼の指を容易く飲み込んでいく。

「や・・・だめ・・・」

「すごいな・・・。カガリ、感じてる?」

次から次へとシーツに滴り落ちる蜜。問われるが、与えられる快感に自我を保つのに精いっぱいで、言葉にならない無様な喘ぎ声を上げるだけ。そんな私を見下ろし彼は愉悦に顔を綻ばせる。そして再び、肉芽を貪る。

秘所を弄る指に、肉芽を貪る舌。与えられる感覚が強烈過ぎて、私をどこかへ向かわせる。

「や、いやっ・・・!な、んか・・・へん、に・・・!あぁ!」

「いいよ。イけよ」

言葉と同時に与えられる感覚が一層激しさを増す。ただ無心で、私の秘所に顔を埋める彼の髪に指を絡ませた。

「いやっ・・!あ、あ、あああああああんっ!」

一際甲高い喘ぎが零れると共に、大きく体がビクついた。ビクビクと痙攣を起こす膣道。まどろむ視界に映ったのは、宵闇の髪、エメラルドの瞳。

あぁ、アスランだ。大好きな大好きなアスラン。愛しい愛しいアスラン。

「アスラン・・・」

切なげな声と共に、彼へと手を伸ばす。私の手を取った彼は、私の手の甲へと口づけをし、優しく微笑んだ。優しさと悲しみの入り混じる笑み。

「カガリ、愛してる」

幻か。錯覚か。彼が私に愛を囁いたような気がした。口づけが降ってくると同時に、股が大きく広げられ何かが押し挿ってきた。
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