本編

□プロローグ
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深夜。
男はディスプレイを食い入るように見つめていた。
ディスプレイの明かりが部屋を淡く染めている。
やがて目当ての情報を見つけたらしく、男はパソコンの電源を消さずに部屋を出た。
廊下の薄明かりが男を照らす。
大柄でかなりの長身、スキンヘッドが特徴的で、彼が歩くたびに微かなモーターの駆動音らしきものが聞こえる。

そのまま、別の部屋へ行き60cmほどのスクリーンの前に立つ。ホログラムのコンソールをいじると数秒のノイズの後、能天気な女性の顔が写ると共に声が聞こえてきた。
「はろはろー♪みんなのアイドル、束ちゃんだよーぅ♪誰が呼び出したのかな?」
「私だよ、束くん」
すぐさま男が言葉を返す。
「あはぁ!その声は…ギルくんだねぇ!おひさー♪なんかあったのかなぁー?」
そして「ギルくん」と呼ばれた男は笑みを浮かべながら即座に言葉を返す。

「見つけたよ」
その言葉に束の顔が一層ニヤニヤする。
「ほほーう?いつ分かったのかな?」
「何、今しがた奴が吐いたと報告があった。それが有益かは知らんがね。」
男は笑みを絶やす事なく言葉を返す。
「で、そちらはどうかな?順調かい?…えーと、「紅椿」は」
男の問いに束は得意げに答える。
「もっちろん!!私を誰だと思ってるのかな?もう仕上げの段階に入ったんだよ!」

「ははっ。これはすまない。君には愚問だったな。」
男は笑いながら答える。

その時、ドアをノックする音が部屋に響く。
「おっと、呼び出しのようだ。ではこれで。」
「じゃあねー。良い知らせ待ってるよー。」
男は束と別れを済ませると、ドアに向き直る。
「何だ?」
男がそう言うと、ドアが少し開き隙間から、ピンクがかった金髪の女性が顔を出す。かなりの美人である。
「あっ、あの〜…さっき呼んだんですが…?」
「で?詳細は?ヘレーネ」
「あっ、はっはい。」
ヘレーネは男の問いに詰まりながら答えを返す。
「えーと、実は…」
「何かあったのか?」
男はヘレーネに問いかける。
「彼が社長と取引したいと……」
女性の言葉に男の目が光る。
「で、それを承諾したのか。」
「は…はい。」
ヘレーネが申し訳なさそうにうつむくと、男が若干の呆れ顔を見せる。
「あとは私が始末をつける。君は他の二人と共に準備しておけ。」そう言うと男はヘレーネの返事を待たず、部屋を出ていった。

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