夢2

□わざとじゃないです
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原口『おいスプーク!』



『止めてくださいよそれ』



原口『お前が言ったんだろぉ?』



『意地悪ですね…原口さんって小学生みたいです』



原口『小学生っておま…はぁーあ、もういい 一人で取材に行くよ』



『え?いいんですか?』





歌舞伎町への取材を断られていた原口は仕方ないとため息をついたところへ止められる





原口『なんだよ連れてってくれんのか?』



『いえ』



原口『っ、ほんとになんだよ!』



『今度、また居酒屋でも行きませんか?』



原口『ん?なんでだ?』



『…』



原口『…おっと、こんな時間だ!悪いけどもうひとつおってることがある!じゃあな』



『あ…』



原口『ちゃんと真面目に書けよスプーク』






嫌みったらしい怖い顔で去っていく原口の背中を見送る



あの人本当に子供みたいだ







『ふざけて書いたことなんかありませんよ…』

















































原口『はぁーあ、このネタももう駄目だな』




追っていたネタが駄目になることは記者ならよくあることだ


ガセネタだったり


気づかれてしまったりと様々だ






原口『…』





先ほどスプークは居酒屋へ誘おうとしたのを思い出していた





原口『なんか、話したいことでもあるんだろうな』






前に飲めもしない二人で居酒屋へ行った際に色々話をした


居酒屋というのはなぜか愚痴を語りたくなる






原口『仕方ねぇな』





ま、大方入れられちまった部署の文句かなにかだろう





原口『…』





よくよく考えればそんなことを気にしなくてもいいはずだ



俺の教育指導はもうする必要はないしな







『あ、原口さんいた』



原口『なんだもう帰ってきたのか』



『はい』



原口『いい記事書けそうか?』



『まったく』



原口『まったくってお前…なんかあるだろ』



『三、四人の親父が道端で嘔吐してました…汚い』



原口『汚いって…』







あれから数時間




原口『ちゃんと書けたのかスプークは』




デスクに伏せている

あんな短い記事を二、三日かけちまうような奴だ、あまり書けてはいないだろう





『ぐー…』



原口『寝て…!?』






アホかこいつは仕事中に






原口『…』



『うーん…』



原口『…』




プニッ


『ぷぐっ……ん゛ーー……』



原口『ぶふっ』




鼻を積まんでやると苦しそうに寝返りをうつ




原口『くっくっく…』



『んー…………』



原口『…』





こいつ、黙ってりゃ………






原口『はっ!』





何を考えてんだ俺は!




原口『起きろ!!』



『わっ!』











































なんやかんやで、気づけば二人で居酒屋へ



原口さんはどこか浮かない顔をしていた






原口『飲めもしないのにまた来ちまったな…』



『誘いましたからね私が』



原口『なんか愚痴あるから誘ったんだろ』



『愚痴ですか?』



原口『なんだよ、ネタでもくれんのか』



『まさか』



原口『…』



『原口さんは恋人とかいるんですか』



原口『ぶっ!!…お前なぁ、何かと思えばそんなどうでもいいようなことを』



『いるんですか?』



原口『いると思うか?』






開き直ったような口調の原口さんは更に眉間に皺を寄せておかずをつつく





原口『なんのための質問だよまったく』



『それは…その………』





考え込む様子の原口さんは何か閃いたような表情で私を見る




原口『そんなこと聞くなんて俺のこと好きみてぇだな、ははっ』



『っ…』



原口『ははは…………は………』





流れてきた気まずい空気を誤魔化すように食べ物を頬張る






原口『…』



『…』






原口さんは マジかよ といった顔をして黙り混む


余計なこと聞かなければよかったと後悔した






原口『まぁ…あれだ』



『…』



原口『どうなんだよ』



『意地悪なこと聞くんですね』



原口『…』



『もういいですよ…さっさと食べてさっさと明日の仕事のために寝ましょうよスプ…スクープとるために』



原口『…』



『原口さん?原口さ………』







よく見ると原口さんはみるみる顔を赤らめている

初めて書いた記事を見たときのような怒るような意味合いでないことくらい私にもわかった






『もしかして…原口さんこういう経験ない、とか』



原口『バカにすんなよ』



『あるんだ…』



原口『ただ、思いもよらなかったというかな…うん』



『ですよね』



原口『…』



『…』



原口『お前のこと…第一印象で言うなら最悪だ』



『え、そんな』



原口『どこにいいとこあった!天然丸出しで子守りだわネタ潰すわ嫌がらせ以外のなにものでもない!』



『ネタのことは俺が悪かったって言って…』



原口『まぁでもあん時よりはマシになった』



『そうですか、マシでよかったです』



原口『マシなだけだぞ?』



『マシならよかったです』



そこから店外へ出て外の空気をあびる

気持ちいいな





原口『…』



『…』






気まずい





『原口さん、ごちそうさまでした』



原口『なぁ』



『はい』



原口『…』



『…』





え、なにこの状況は…まさか


キス?





原口『お前の気持ちにな』



『あ、はい』





断られる、そう思っていると





原口『お前の気持ちにこたえたいと思ってる』



『…え』



原口『…』



『それは、同情で…?』



原口『ここまできてそんなわけあるか!』



『え、じゃあ私のこと好きなんですか?』



原口『いちいち言わなきゃわかんねぇのか…』



『はい』



原口『つまりだな…こういうことだ……』






肩に手を置かれてゆっくりと顔が近づいてくる

ちょっと怖い顔だな←








『原口さん…』



原口『…』



『キスをする時というのは、目を瞑るんでしたっけ?』



原口『は…!?』






拍子抜けだとか空気読めだというオーラをかもしだされる

そう言われてもわからないものはわからないのに






原口『わざとか?』



『質問にわざととかありませんよ、わからないから聞いたんです』



原口『このタイミングでっておま』



『で、目を瞑るんでしたっけ?』



原口『教えない』



『なんでですか』



原口『だからな、なんでもかんでも教えてもらえると思うなよ』



『はぁ、では目をあけて…?』



原口『…瞑れ』



『はい』






目を瞑ると原口さんの吐息が少し顔にかかってくる


変な言い方をするなら興奮…?いや緊張してるのだろうか 肩に置く手が少し強張って…





『んっ…』



原口『……』







このあとどうすればいいんだろう

なんせ経験など毛頭ない





原口『おい、こら!』



『はっ…!な、なんですか』



原口『息をしろ息を!』



『へ…?』



原口『真っ赤じゃねぇか』






どうりで頭が回らないわけだ



天然はこれだから、と原口さんがぼやいた





原口『息止めるから真っ赤になるんだ、ったく』



『真っ赤なのは…そういうのじゃないですよ』



原口『…』








あ、原口さんまた赤くなった









原口『…帰るなら、送るぞ』



『あ、いいんですか?タクシーなんですよ助かりました』



原口『おまっ、一人前の記者なら車の一台…!』








甘い雰囲気はどこへやら



そこから数分間仕事の話をした
 

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