長い夢

□第九話
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次の日…





次の日…じゃねぇよ!!来るなよ次の日!沈めよ太陽!輝け月よ!!




なーんて我が儘通用するもんか、私は覚悟を決めなければならない



仕事中は大丈夫かな?ははは









『おはようございます!』




周りに心配かけないよう笑顔をふりまく




『おはようございます!三浦さん!芹沢先輩!伊丹さん…!』


芹『おはよ!』


三『今日も元気だな、おはよう』


伊『おはよう』


『…』




なんとなく壁を感じる接し方に焦りを覚える








杉『おや、こちらは…』


伊『あーもう!警部殿!捜査の邪魔です!!』



いつもより荒れた言い方に一昨日の出来事を連想させる



神『あ、どうも』


『こんにちわ神戸さん』


神『今日元気ない?』


『まさか(笑)しいていうならお腹すきました』


神『そ、なんか食べる?一緒に』


伊『あーはいはいはいそこまで!特命は帰った帰った!』




パンパンと手をならし右京さんを追い出す



今朝芹沢先輩いわく不機嫌だったけど特に大丈夫だったとのこと



『…』


伊『ここを探って…〜して…』


芹『はい、わかりました!』


三『じゃあこの線洗ってみるか』


『また右京さんいたりして(笑)』


芹『あははありえる』


伊『無駄口たたくな!』


芹『いてっ!』


三『警部殿がいたとしたらアタリだな』


『三浦さん;』



そんなこんなで1日を終えた


特命は相変わらずすごいし我ら一課は大変だし私はデスクワーク中心だし












『へ?』


神『どう?』


『こ、この試写会!?すごい!チケット手に入ったんですか!?』


神『都合悪くなって使えないからだって、貰っちゃったんだけどペアだからどうかなって』


『わぁー!!…あ、でも大河内さんと』


神『なんでそこで大河内さんがでてくるの?;』




え、そりゃ恋人だから←



神『どう?』


『んー…』



再来週の試写会、仕事も休みの日



でも伊丹さんという恋人がいるし今微妙だからこんな浮気みたいなマネしたくないな


『…』


神『この映画前に興味あるって…』


『…私は』


神『!』



断ろうと口をあけると後ろから手首を掴まれた



『!!!!??』



突然の衝撃に声がでなかった、後ろから聞こえていた足音は私に向けられていたのか



神『伊丹刑事…』


『ぇ…!』





振り向くと私の手首を掴んで今までで見たことないほどの怖い顔つきをした伊丹さん




『ッ!!!』


さすがの私も思わず後退りしそうになる



『伊丹さん、あの』


伊『来い』


『ぇ、やっ!どこに…!』



唖然とする神戸さんに謝罪のジェスチャーをしてなんとか笑顔を作ると

複雑な顔して手をふってくれた




神『伊丹刑事ってヤキモチ妬きなんだな』
















『伊丹さん…痛っ、離し』


伊『なにやってんだよ、お前』


『ぇ…』


伊『……』





伊丹さん、相当怒ってる

そりゃそうだ…


伊丹さん目線で考えれば自分は彼氏なのに秘密を共有できず他の人は知っていて気まずい雰囲気の中彼女は他の男にデートに誘われ




私って悪女?




伊『…』


『…』




引っ張られてる手首はまだ強く締め付けてこんな時に呑気かもしれないけど逃げないでと言ってるようで嫌な気にはなれなかった





『きゃっ、』


伊『…』




乱暴に車に乗せられそのまま発進する、これじゃ拉致ですよ伊丹さん




『…』



話しかけようにもそんな雰囲気じゃない

どこへ向かうのかもきけない




『…』


伊『…』



無言のまま怖い顔をしてる伊丹さんに私は恐くなった



『伊丹…さん』


伊『…』




しばらく乗っていると静かな高台についた

こんなとこあったのか



『…きれい』


伊『…』



ついたもののまだ車に乗ったままでいた、何も言葉を発しない伊丹さんに問いかけようとするが怖くてできない


掴まれていた手首を少し擦っていると



伊『ぁ…』



少し怯えてしまった私の目を見て伊丹さんはしまったと悲しい顔を浮かべる




伊『…わりぃ』


『え?』


伊『大人気ない真似した』


『いえ、そんな』


伊『いや、強引だった お前の気持ちを無視した』


『…』


伊『痛いか?』



心配そうに手首を撫でる

確かに掴まれた時は少し痛かったが痕が残るほどではない



『いえ』




大丈夫と告げてもまだ心配そうに手首を撫で辛い顔を見せる




違う、私はこんな顔をさせたかったんじゃない




伊『かっこわりぃだろ…』


『…』


伊『お前より年上のおっさんがこのザマだぜ?』



余裕ねぇわと顔をしかめる



自傷気味の笑顔が痛々しい

伊丹さん…



伊『…』


『伊丹さん』




やめとけばいいのに


でも、私が嫌われたくないという身勝手な理由で伊丹さんが傷つくのはもう見たくない


私がいなければ彼はこんな顔せずに…



『私…話します』


伊『!』


『…もう忘れてしまう前に』


伊『いいのか?いや、無理に話すな…もう怒ってねぇから 妬けただけだ…』


『いえ…大丈夫ですそれに嫌われたって、軽蔑されたって、恋人じゃなくなったって』



いいんだ、これで



『私は伊丹さんの部下でいれるんですもん…それだけで私は…』




初めはそれだけだったのに

欲深くなってしまった



伊『…』



ゆっくりと息をはき言葉を発する
もう後戻りはできない

体が震える


真剣な伊丹さんの目を捉えて口を開く



『私異世界から来たんです』


伊『…は?』





思ってもみなかった言葉に動揺を隠しきれない伊丹さん




『自分でも、わかんないんですけどあの事故の日から伊丹さんたちという本来は存在しない人達が』


伊『ま、待て!ちょっと待て!』




混乱してる伊丹さんに言葉を止める




伊『…』


『…』


伊『…そ、か…異世界な…』



半信半疑どころじゃない



信じていないのがすぐにわかった




『信じてないでしょ?』


伊『…ぃや…』




否定するような素振りも自信なくする、これが普通の反応だよね


右京さんがすごかっただけでこれが普通の反応




『私の世界では伊丹さんはドラマの中の人、私はそれに憧れた女の子』


伊『…』


『伊丹さんたちが出会う前から私はみんなのこと知っていた…芹沢先輩も、三浦さんも、杉下さんも亀山さんも神戸さんもみんなみんな…』


伊『…』


『これからどうなるかも…』


伊『…どう、なるんだ?』


『…もう、ほとんど記憶は残ってません…けど、しいて言うなら…誰かが死ぬんです』


伊『縁起でもねぇ…』


『伊丹さんは大丈夫のはずです…』


伊『…』



あぁ、やはり話さなければよかった




伊『…わりぃ』


『…』





その一言が何を意味するか



私の胸に突き刺さった





『…いいんです、伊丹さんはとても正しい』


伊『…お前が嘘をつく人間じゃないことはわかってる、信用してる、お前を信用してはいるが…』





うん、大丈夫



伝わってるよ…わけがわからないって顔してるもん

軽蔑してないだけ嬉しいよ





『伊丹さん、私伊丹さんが大好き…ずっとずっと…』


伊『俺だってお前のこと…』


『…もう帰りましょう、明日も仕事です』


伊『………あぁ』
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