闇の皇太子

□麗しの貴女へ
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『もう、霧砂さんなんて知りませんッ


艶やかな銀色の髪をなびかせさて 天音は走り去っていく

霧砂は額に手を当て息をつく

「公共の場で堂々と痴話喧嘩か、霧砂」

声をかけられ顔を上げると鬼火が腕を組んで立っていた

「徳長の護衛か?」

「そうだ、にしてもおまえが女を怒らせるなんて珍しいな」

鬼火の一言に言葉がつまる

「で、原因は?あの 天音姫がちょっとしたことで怒るとは思えんが」

「水着の仕事がきたんだ」

「………………………………………………は?」

―遡ること数十分前―

「最近仕事のほうはどうだ?もう慣れたか?」

『はい、毎日楽しくやってます。霧砂さんがお仕事紹介してくれたおかげです、ありがとうございます』

にぱっと華が咲くように笑う彼女に思わずつられて頬が緩む

モデルの仕事を紹介するとすぐに頭角を表し今や事務所のトップモデルも夢じゃない立場まで上り詰めている

もともと才能があったのだろう

『そういえば、今度海に行くんです。初めて行くのでちょっと楽しみなんです』

「何の撮影だ?」

『水着です。今年の流行の水着を撮るんですよ』

霧砂の眉間にシワが寄る

「一人で?」

『いえ、5人くらいいますよ?』

名前を挙げてもらうと事務所の顔のモデルばかりだった

だが、霧砂の不機嫌の理由はそこではない

「 天音 」

『はい』

「その仕事断れ」
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