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□夏祭り
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「姫宮がおまえと敵対することになったら、どうする?」
夜、とあるバーに入るなり周防は宗像に出会ってしまった
店を変えようと踵を返した矢先に今のセリフを言われたのだ
姫宮=祈李だということは分かっている
だが、祈李が自身に仇なす、ということが理解できなかった
「彼女も王だ。今はいないがそのうちクランズマンだって作るかもしれない」
「…………」
「そしていつかおまえの元から去る日だってくるかもしれない」
振り向くこともなくただ聞くことしかできなかった
「おまえは、姫宮と戦えるのか?」
無邪気という言葉そのものといえる陽だまりのような少女が脳裏をよぎる
「戦える、誰であろうとな」
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にぎやかな夏祭りの中祈李は後悔していた
こんなことになるくらいなら来るんじゃなかった、と
それは隣にいる真琴も同じようで――顔が怖い
「さぁ、はりきって楽しみましょう!」
祈李と真琴を半ば強引に連れてきた美奈は楽しそうだった
美奈に「浴衣を着て夏祭りに来て」と言われて行くと美奈は祈李と真琴を強引に連れてある美形勢ぞろいの男子のグループに合流させたのだ
ちなみに祈李が身につけているのは黒色の浴衣だ
別に自身のカラーだからではなく一緒に浴衣を買いに行った真琴にすすめられたからである
「紹介しますねッ祈李と真琴、私の友達です」
美奈によると男子グループは近所の高校の生徒たちなのだという
数はこちらが3に対してあちらも3
美奈の魂胆がわかり本気で怒りを覚える真琴が怖くて仕方がなかった
「じゃ、行こっか?祈李ちゃん」
どこぞのチャラ男を思い出しため息をついた
「ねぇ!かき氷食べたくない?」
美奈が突然かき氷屋の前で提案する
「イイねぇ」と他のメンツは買う気満々だ
「祈李は?どうする?」
紳士オーラ全開で聞いてくる彼に祈李は複雑な表情をした
『あー……』
全部食べれる気がしないのだがいちごシロップがかかったかき氷を見て考えあぐねていると肩を叩かれた
「やっぱり、姫宮だー」
「姫宮!?」
真琴がびっこりして祈李に振り返る
『道明寺さん?』
「こんばんは、姫宮」
「姫宮、ゆかた似合ってるっすね」
秋山と日高も一緒だった
「し、知り合い?」
男子に聞かれうなずく
『にしても三人とも仲良しですね。いつも一緒じゃないですか』
「あー、そうかも」
同級生が大人相手に会話を弾ませている様子をぽかんとしてみているグループに祈李は気付かずきゃっきゃと話している
「で、姫宮。もしかしてかき氷買う予定でしたか?」
『秋山さん、正解。でも、一口くらいでいいんですよねー』
全部食べきれないし、と苦笑する
「んじゃ、俺の一口あげますよ」
『いいんですか?』
「もちろん」
そう言うと日高がいちごのかき氷を一口差し出すのでありがたくいただくことにした
『んっ、冷たいッ!けどおいしい』
「それはよかった」
背後が何とも言えない空気になっていることを祈李が知るのは数分後であった