K
□光る君
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「立ち読みなんかしないで座って読めば?可憐なお嬢さん」
冷房の利く図書館
その一角で立ったまま本を読みふけっていた私の耳元で静かに囁かれた
「制服姿もいいけど私服も可愛いね祈李」
『こんにちは、千歳さん。こんなところで会うなんて珍しいですね』
振り返りもせず文字を追う私の隣にいた吠舞羅一のプレイボーイ千歳洋は苦笑した
「冷たいねぇ。普通の女の子なら今ので可愛い反応してくれるのに」
その言葉で私は思わぬ衝撃を受けて本を落としてしまった
『あ、ご、ごめんなさい』
動揺を悟られないように気丈な声で断りを入れてしゃがんで本を拾う
普通の女の子じゃない
その事実は黒の王となった私の心の傷となっている
最近では吠舞羅のメンバーのおかげで考えないようにできていたが思い出してしまった
うまく誤魔化せたと思っていたが、千歳は自分の失言に気付いたようで口元を手で覆っていた
「ごめん、そんなつもりじゃなかった」
彼はなにも悪くないので私は無言で首を振る
そこで私は気付いた
『千歳さん』
私は人差指で自分の右頬を指した
『赤くなってますよ』
くっきりもみじマークがついた頬を千歳は苦笑して撫でた
「これは、だな」
『フラれたんですか?また』
「また、だよ」
しゅんとうなだれる千歳