K
□その名は「恋」
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トントントントントントントントントントントントントントン
バーのカウンター席に座る八田は苛々した様子で指でカウンターを叩いている
見かねた草薙がため息交じりに八田を見下ろした
「…………八田ちゃん、なにがあったん?」
「別に、なにもないっすよ」
そういいながらもトントンと指は動き続けている
そしてその目線は十束とアンナと赤い紐であやとりをしてあそんでいる祈李に向いていた
なんとなく事情は把握した草薙に鎌本がそっと耳打ちする
「実はっすね……」
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鎌本曰く、
昼間、路地で雑魚組織の連中と喧嘩をしていたのだという
そしてその場にいた赤城がふいに隙を付かれて殴り飛ばされたのだとか
すると
『あれ、翔平?』
表道路まで飛ばされていた赤城の目の前にはいかにも学校帰りという体の女子校生が一人
赤城は驚いた様子で彼女を見上げていた
「祈李……っ!」
『鎌本さんにカラスさんもいらっしゃったんですね、こんにちは』
笑顔でのんきに挨拶する 祈李の登場でその場の空気が一瞬にして変わったという
そんなことは露知らず祈李はしゃがみこんで赤城の顔をそっと両手で包みこみ『あはっ、唇切れてるじゃん』など言いながらハンカチで血を拭っていた
「なんだ、この女。おまえらのオトモダチか?」
雑魚組織の男が一人、祈李に近づく
「祈李!」
赤城が叫ぶのと同時に彼女の肩を男が掴んだ