頂きモノ

□孤高の華一輪様クリスマス企画
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それは女の子なら、一度は憧れるようなシチュエーション。
素敵な夜景の見えるホテルの最上階で、大好きな人と一緒に過ごすクリスマスの夜。

「どうした?嫌いな物でもあったのか?」

くすり。
からかうような悪戯めいた微笑みに、胸が跳ねる。
私が緊張してるなんてお見通しな筈なのに、あえてそこには触れずに意地悪に瞳を細めて笑う。

「…そう緊張してくれるな、拐かしている気になってしまう」

いつもなら、高く結い上げてる髪をゆったりと首元で纏めて(弁慶さんみたいと言ったら本気で嫌そうだった)ラフながらも品のいいシャツを軽く着崩した姿は、彼を見慣れてる私ですらも見惚れる程に魅力的で。
琥珀の輝きを宿した目が、日溜まりのような優しさに煌めいた。

「誘いに乗って貰えたと言う事は、今夜は帰さなくても良いのだろう?」


すっ、と。
愛おしむように、節だった長い指先が触れるだけの強さで頬を滑る。
熱を孕んで溶けそうな瞳に、かぁっと頬に朱が差すのが自分で分かった。
物音すら立てずに私の隣に立ったその人は、会社の女子社員が憧れてやまない営業一課の源九郎さんと言う。
何が気に入ったのか私には分からないが、源さんは私に職場真っ只中で告白してくれて(彼の親友の有川さんは爆笑しながら見ていたっけ)付き合い始めたのだけど。
紳士的で女性に馴れてる源さんと、恋愛若葉マークの私とでは、間違いなく半端ない温度差があって。
信じてないとかじゃなくて、怖さに足が竦んで一歩が踏み出せないでいた。
だけど、折角のクリスマス。
嫌な顔一つしないで、私が踏み出すのを待ってくれてる源さんに、私だって誠意を見せたい。

「お前が嫌がるような真似は、誓ってしないさ。ただ、俺も耐え性のない男だからな…惚れた女の全てが欲しいと、願ってしまうんだ」

ふわりと、跪いて。
指先に軽いキスをした源さんは、さらにペロリと舐めて。
私を見上げる眼差しに、研ぎ澄ました鋭い真剣な視線を絡めて口元だけを弛ませた。

「…お前にしか、用意出来ないんだ。たったひとつ、俺が世界中でひとつだけ欲しいプレゼントは」

バクバクと煩い心臓の音は、指先から源さんに伝わってないだろうか。
きゅう、と切ない胸の疼きに。
僅かしか触れていないその場所が、火傷したように熱い。

「俺が欲しいのは、お前だけだ。お前がそれを許してくれるなら、俺は俺の全てでお前を大切にする」

なんて、ひと。
散々甘い言葉で惑わせて、囁いてきた癖に。
いざ勝負時に、これ以上ない程の正攻法だなんて。

「…返事は、貰えないのか?」


そして、やっぱり意地悪。
恥ずかしくて仕方なくて、それでもどうしても応えてあげたくて。


「…ならば…唇も、拒まないでくれよ?」


本当に、小さく頷いて呟いた「九郎さん」の声に。
嬉しそうに笑って、すぐ塞がれた唇からは。
甘い響きだけが、一晩中零れる事になった。


◆囁いて・触れて・応えて◆


(…ん、源、さん)
(「九郎」だろう?まだ教え足りなかったか?)
(んぅっ、あ、やっ)
(さぁ、もう一度呼んで御覧?)


*∵*∵*∵*∵*∵*∵*∵*∵*∵*

睦月指名の黒九郎、略して黒郎(爆笑)
会社の上司設定で、皇夜の趣味でかっ飛ばしましたよ、えぇ。
 
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