二周年記念部屋

□黄昏ロンリネス
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「いつまでボケッとしとんねん」

「あいたっ
ちょ、なんなんいきなり?!」

ぼんやりぼんやり窓の外を見ていたら、突然の衝撃。
同時にかけられた声に振り向けば、ラケットバックに制服姿の光がいた。

「光?何してんの、部活は?」

「アホ。とっくに終わっとるわ
お前ちゃんと目ついてんのか」

言いながらもう一度頭を叩かれる。
でも今度はいきなりじゃなかったからか、さっきより優しい気がした。
…いや、それはないか

「ついとるわ、ほんま口悪い奴やなぁ…って終わったん?え、今何時?」

思わずキョロキョロ辺りを見回せば、確かにちょっと薄暗い。

「7時。…お前ほんま何してんねん、誰か待っとんのか?」

「や、そういうわけじゃないんやけど…うん。
ちょっと考え事?」

首を傾げながら言えば、冷たーい視線を向けられる。

「…言いたい事あるんやったら口で言いや」

「お前が考え事とか、明日は槍でも降るんちゃうか」

「…………せめて雪とか雨って言われへんの?」

「そんなもんお前がアホみたいな顔しとる時点で降るに決まっとるやろ」

アホか、ともう一度言ってから、光はラケットバッグをおろして前の席に座った。

「アホちゃうわ。…なんなん、ほんまに」

振り向かず、ただ居るだけ。
それだけなのに、何故か涙が溢れてくる。
―なんなん、これ

「うるさいわ。
…えぇから黙って泣いとけ」

「な、いてへん!」

「……もうえぇから黙れ。
しゃあないからちょっとだけ聞いとらんフリしといたる」

そのまま静寂が降りて、聞こえてくるのは壁にかけられた時計の秒針の音だけ。

また一段と暗くなった教室の中、目の前には光の背中があって、
―いつかは光もおらんくなるんかなって思ったら、一気に視界が歪んだ。

自分でも驚くほどの寂しさに押し潰されそうで、それでも今は目の前に光の背中があるから何とか落ち着いてきた。

「…ありがと」

まだ声は震えてたけど、涙は止まった。
聞こえてへんくてもえぇか、と思いながら呟いた言葉に、光が振り返る。

「ブッサイクな顔しよって…鼻水出とるんちゃうんか」

「なっ…し、失礼なやっちゃな!鼻水なんか出とらんわ!
て言うか何で振り返ってんのよ!」

溢れたままだった涙を慌てて拭えば、頭に軽い衝撃。
いや、衝撃とも言えない弱さのそれは――

「……、光?
え、なんであたしの頭撫でてんの?」

「知るか。
自分で考えろや」

ぱちぱちと目を瞬かせれば、いつもより数段優しい瞳と目があって。

「…な、なんなんよ……」

視線をさ迷わせて、口を尖らせて小さく呟くことしか出来なかった。


(なんやその顔。ブッサイクやな)

(うううっさいわ!ほっといて!)
 

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