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□痕
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「んっ、ふ、ぅ…」


夜。
静かな部屋は、二人分の荒い息遣いと、時折漏れる喘ぎ、そして卑猥な水音が支配していた。

「っ、とき、しまっ」

腰を進めると、耐えるようにエルエルフはシーツをきつく握った。
いつもならキスをしたり、頭を撫でたりしているのだが、今夜のハルトは違った。
無言でエルエルフの中を突き上げている。
目もいつものやさしい眼差しではなく、少し怒っているような印象を受ける。


「ときしまっ…な、んなんだっ、あっ、くっ…!」


ハルトの下で喘ぐしかないエルエルフが抗議の声をあげても、動きを止めず、むしろ激しくしていく。
普段が普段だけに、ひどく困惑してしまう。


「!? あっ、なっ、ひっ」


わき腹にある傷跡に、スッと指を這わされ、体がビクッと反応した。
そのまましつこいくらい傷跡を撫でられる。
傷跡は誰しもが敏感になってしまう場所だ。
それはエルエルフも同じで、くすぐったいような感覚が走って身をよじって抵抗する。
しかし。

「!? うあっ!!」


生暖かい感触にハルトの顔がある場所を見れば、赤い舌で傷跡を舐めているところだった。
ぴちゃっと何度も何度も舌を這わされる。
指だけでも感じてしまっていたのに、舌で舐められたらたまらなかった。
ゾクゾクと背筋を快感が上る。
また変な声が出てしまいそうで、自分の指を噛んで耐える。
それでも体中の傷跡を丁寧に舐められていくうちに耐えきれず、艶のある声が。


「んっ、ああっ、や、め、時縞っ」


傷跡を舐めるのをやめさせようと、ハルトの頭に手をやるが、力が入らず、結局添えているだけとなってしまう。
快感が走るたび、ハルトとつながっている場所がキュウキュウと締まり、中にあるモノの形をより強く感じる。


「う、んんっ!あ、も…い、くっ…! あっ!!」


ハルトの頭を抱きしめて、エルエルフは絶頂を迎えた。
締まった中の動きに「くっ」と耐え、ハルトはさらに中を突き上げる。


「んあっ!!な、あ、あ、やめっ、イッた…と、ころっ! あ、あっ…!」


エルエルフの奥深くまでハルトが入って、そこでびくりと震えた。
熱い液体が腹を満たしていき、はぁ、と二人は息をついた。
荒い息が落ち着くのを待たず、ハルトから深く口づけられる。
それに何とか答え、目を閉じてほてりがおさまるのを待っていた。






_____

体を清めるために入った湯船の中で、エルエルフはハルトの腕の中に納まっていた。
髪を撫でられ、それが心地よくて目を細める。
つい、と視線をあげてハルトを見れば、先ほどより機嫌がよいのか、いつもの眼差しに戻っていた。

「おい」

「ん?」

「なぜ、さっきはあんなに機嫌が悪かったのだ」

回りくどく聞くと誤魔化されるだろうと、単刀直入に聞くと、


「え、あ、そ、れは」


途端に視線が泳ぎ、口調もやわやわになる。
これは聞くまで離すわけにはいかないと、更に詰め寄る。
あれだけ好き勝手にされたのだ。
理由くらい知らないと割に合わない。
逃がさないというように問い詰めると、やっと言いにくそうにわけを話し始めた。


「傷跡…体中にあるだろ…? 僕が知らない誰かが君の体に一生消えない痕を残したんだと思ったら、なんだか無性に悔しくて…」


言いながら傷跡をなぞられる。
要するに、傷跡に嫉妬していたのだ。
エルエルフの目がわずかに見開かれる。


「バカか、お前は」


「うっ、ご、ごめん…んっ!?」


辛辣な言葉でしゅんとすれば、いきなりエルエルフからキスをされた。
首に手をまわし、引き寄せるようにしてされる深いキス。
唇を離したエルエルフは怒っていると思ったのに、どこか嬉しそうだ。


「この…バカが」


そうしてまた重ねられる唇。
そこには呆れと、確かな愛情が込められていた。




end
 

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