せいんと学園高等部

□せいんと学園高等部
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そろそろ下校時間だ、ということで私たちの勉強会は終了した。
明日はなぜかミロとカミュも一緒に勉強するらしい。
いつの間にか話の流れでそうなっていた。

夕暮れの帰り道は気分を憂鬱にさせる。
今日は久しぶりにちゃんと勉強したからか疲れているせいもある。
しかも私はみんなと帰り道が違う。
1人で帰る道がいつもより長く感じる。
早く帰ってベッドに飛び込みたい。
……飛び込みたいのにそういう時に限って面倒なことに巻き込まれるんだよなぁ。
思わずため息が出た。

今私の視線の先には学ランをきたつながり眉毛さんがいる。
できれば避けてとおりたいのだが、あいにく今は人通りがない。
そのうえあの人がいる場所を越えれば家はすぐそこなのだ。

「あのー、つなが…ラダマンティスさん?でしたっけ?」
「ああ、たしか君は立花……だったか。久しぶりだな。」

思わず話しかけてしまったのだが、腕を組んで険しい顔をしていたわりにつながり眉毛さんもといラダマンティスさんは微笑んで返答してくれる。

そしてなぜか世間話が始まった。
それというのも私がきこうとしてもラダマンティスさんが先に質問を投げかけてくるから答えるのに必死になってしまったからなのだが。
まぁ、そのおかげか、ラダマンティスさんが冥星学校高等部の2年なのだということを知ることはできた。
…知っても使いどころのない情報だなぁ、とは思ったが。

「あ、あの!ラダマンティスさんはこんなところで何やってるんですか?」
「これはその……今日カノンが手合わせをしてくれるというから待っていたんだ。」
「カノンさんってこの前の…?」
「ああ、学校は違うが部活が一緒でな。よく大会の前になると手合わせをしているんだ。」

この前の様子からして私に言わせれば喧嘩にしか見えないのだが、あれを手合わせというのだろうか。
しかも私が見てる時ってだいたい睨み合ってすごい殺気を放っているだけのような気もする。
もしかしたらその後から手合わせをするのかもしれないが、だとしたらなんの部活なのだろう。
頭に疑問ばかり浮かんでいたからかぼーっとしていたらしく、ラダマンティスさんは苦笑いを浮かべていた。
そしてそっと部活が空手であることを教えてくれる。
なんとなく考えがばれていたことが恥ずかしかった。

「まだカノンさんきてないんですよね?」
「ああ。でも今日はこないかもしれないな。」
「え?なんでですか?」
「長い間待っているが姿も見えなければ連絡すらないからな。こういう時、あいつはこない。」

なんという悪魔だ、カノンさん。
ラダマンティスさんはいつも待ちぼうけをくらっているとかかわいそすぎる。
そういう理由だから、とラダマンティスさんは帰ろうと歩みを進め始める。
そんなラダマンティスさんを私は止め、待ってもらっている間家に走る。

家にカバンを投げ、冷蔵庫から目的のものを取り出してダッシュで戻る。
腕組みと険しい顔が標準装備らしいラダマンティスさんはその状態で壁に寄りかかっていた。

「お待たせしましたー!ラダマンティスさんにおすそ分けです!」

私が手渡したのは炭酸のジュースとシュークリームだ。
今日の朝、夜勤から帰った母が有名なケーキ店から買ってきたものだから味はお墨付きだ。
立ちっぱなしで、待ちぼうけをくらっていたラダマンティスさんへ私からのプレゼントだ。
そういうと少し渋っていたラダマンティスさんだったが快く受け取ってくれた。

「ありがとう、立花。ではまたどこかで会おう。」

ジュースだけカバンにしまい、シュークリームを片手にまるでどこかのヒーローのようなセリフでラダマンティスさんは夕暮れに消えた。
格好とセリフが合っていない気もして少し笑えたが、その状況を作り出したのは他でもない私なので笑うのは我慢しよう。
ラダマンティスさんの姿が見えなくなると、今度こそベッドに飛び込んでやる!と思いながら家路を急いだ。
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