せいんと学園高等部

□せいんと学園高等部
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やっと午前中がおわり、昼休みだ。
今日はまだ授業で寝ていない。
シオン先生の衝撃発言のおかげかもしれない。
もしくは親友の最近の行動が気がかりだからか。
本当は言い出してくれるまで我慢しようと思ったのだが、私はそこまで気の長いほうではなかった。

「ねぇ、親友や。今日は外で食べないかい?」
「…いいけど。あんたなんか企んでる?」
「そんなことないって!」

いつもは教室で食べているお弁当だが、場所がかわれば親友の気分も変わるかもしれない。
口からでまかせを言ってごまかしているが、つまりは親友の話がききたいだけなのである。
実際は違うが、立ち入り禁止だと噂されている屋上ならめったに人はこない。
つまり、絶好のチャンスなのである。

「で?なんか言いたいことあったんじゃないの?」
「なぜそれを……!」
「何年一緒にいると思ってるのよ。顔見ればわかるわ。」

屋上に腰かけてお弁当を食べているとつぶやかれる言葉。
やはり言いたくてしょうがなくてむずむずしていたのが顔に出てしまっていたらしい。
さすがは親友である。
そんなことを言われてしまってここでためらっていてもしょうがない。
息を深く吸い込み、ずずっと親友に近づいた。

「…近いわよ。」
「あ、あのさ!親友よ!学園祭の時になんかあったの?」

途端に曇る親友の表情。
返答がないことを肯定ととる。
しかし、何があったかは言ってはくれない。
やはり言いづらいことなのだろう。
私自身これ以上何を言ったらいいかわからなくて言葉が出なくなる。

「ねぇ、愛。」
「は、はいぃ…!」
「前世って信じる?」

突然親友がつぶやいたのは意外な言葉だった。
親友はうつむいたまま顔を上げない。
前世、ときくとサガ部長たちの出ていた劇を思い出す。
現代を生きる高校生が前世の記憶をもって過ごす。
個人的には前世の記憶をもっていることは素敵なことだと思っている。
だが、それは私が前世の記憶をもっていないから気楽に言えることなのかもしれない。

「私は信じるよ。前世があって生まれ変わったから私はここにいる……なんて。」
「…そうね。」

一瞬驚いた表情を見せた親友だったがすぐにふっと不敵な笑みを浮かべた。
まるで私の言葉に安心したような、満足したような表情。
なんだかいつもの親友に戻った気がする。

「あんたのおかげでなんかふっきれた気がするわ。」
「えーと……私なんかしたっけ?」
「本当にあんたは……。」
「えっ!なになに!?」
「なんでもないわ!」

久々に楽しそうに笑う親友を見た気がする。
そしてからかうように頭を押さえつけられた。

結局親友が何に悩んでいたのかも、私が何をしてあげられたのかもわからない。
でも親友が元気になってくれたからそれでいいのかもしれない。

「あ、そうだ。あんたにプレゼントがあるのよ。」
「ほんとっ!?」
「はい、これよ。」

親友に食べ終わった弁当箱の横に置いてあった綺麗にラッピングされている箱のようなものを渡される。
意外と重いそれがなんなのか気になってしょうがない。
できるだけラッピングが崩れないように丁寧に剥がして行く。
姿を現したそれにげんなり気分になってしまったのは言うまでもない。

「あ、あのさ。一応きくけど、これ何?」
「教科書よ。」
「えーと……プレゼント」
「教科書よ。」

やや威圧的な笑みを浮かべて親友は有無を言わさぬ勢いだ。
つまり返品は不可ということなのだろう。
たしかに今はテスト前で勉強しなきゃいけないことはわかっている。
だから助けを求めたのは私だが、まさかこういう方法をとられるとは思わなかった。

「私からのプレゼント、使ってくれるわよね?」
「うぅ……はぁい。」

相変わらずの威圧的な笑みである。
使わなかったら後が怖い。
こうなったら本気でテスト勉強をしなければならないようだ。
ため息とともに涙が出そうだった。
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