せいんと学園高等部

□せいんと学園高等部
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私は返事の代わりにサガ部長の手を握った。
そしてうつむきながら、喜んでとつぶやく。
正直な話、ドキドキしすぎて、恥ずかしすぎて、顔をあげることができなかった。
それでも部長に私の声は届いていたらしく、手に温かみを感じる。
それがなんだか不思議で思わず見上げると優しく微笑んでいる部長がいた。

「それじゃあ行こうか。」
「は、はいっ!」

会話とかいつもと同じはずなのになんだか自分が自分ではないと感じるくらい緊張している。
それは後夜祭がつくり出す雰囲気ゆえか、自分が部長を意識してしまっているからか、きっと両方なのだろう。
そんな私を見て部長はくすり、と笑った。

「ぶ、部長……?」
「いやすまない。そんなに緊張している立花を見るのは初めてだったから思わず。」
「なんかむかつきますね、それは。…もう、部長なんか知りませんっ!」

優しい笑みはそのままで部長はそう言ってのけた。
なんとなくいらっとしていつもの調子で冗談を言う。
もはや私の中に緊張はなくなっていた。
部長は私の緊張を和らげようとしてくれたのかもしれない。

「悪かった、悪かった。後で何か買ってやろうか?」

いや、そんなことを考えずに本能のままに行動してそうだな、この人は。
まぁ無意識でも私の緊張を和らげてくれるなんてなんだか嬉しかった。

「じゃあ、今度ケーキ食べに行きましょう!」
「それくらいお安い御用さ、お姫様。」

私としては親友が付き合ってくれないケーキ屋に一緒に行ってほしい、という軽い気持ちで言ったのだが、返ってきた言葉があまりに真摯で鼓動が跳ね上がる。
しかもどこかの王子ばりに跪いて私の右手の甲にキスを落とすものだからやっとひいてくれた顔の熱がまた上がってきているのを感じる。

今日のサガ部長は私をエスコートしてくれる、まるで王子。
その容姿や動作からして様になっており、文句のつけようもない。
いや、褒め言葉以外出てこない。
だからこそ私の心臓は悲鳴をあげそうなほどドキドキして止まらないのだ。
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