せいんと学園高等部

□せいんと学園高等部
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そろそろ後夜祭だな、とマニゴルド先生がつぶやいたところでムサカを囲む会は閉会になった。
カルディア先生とマニゴルド先生は結局ムサカに手をつけず、私や二人の先生に食べさせることに専念していたため、元気一杯だ。
しかし犠牲者はそういうわけにはいかない。
お腹が一杯なのに、さすがにもう飽きたという状態だったのに目の前の物は消えない。
まぁ5人で食べればなくなっていたのだろうが、2人戦力になっていないのだから当然といえば当然だ。

犠牲者である私は体が重く、なかなかソファから立つことができなかった。
廊下からは生徒たちの楽しげな声がきこえてくる。
きっと今から後夜祭の会場であるグラウンドに向かうのだろう。

「そういやお前、後夜祭のダンスの相手決まってんのか?」

カルディア先生の言葉に肩がびくりと跳ね上がる。
ここにくる前の嫌な光景が蘇る。

「その反応は決まってねーんだな。」
「そうなんですよね……。なんかめんどくさいことになっちゃって。」
「はぁ?どういうことだよ?」

ここにくる前の嫌な光景を先生たちに説明する。
正直あの中から一人だけ選ぶのは失礼なのではないかということも。
話し終えると加害者の2人は大口を開けて笑った。

「んなおもしれーことになってたとはな。」
「面白くないですよ…。誰かいませんかねぇ、踊ってくれる無難な人。」
「立花は誰でもいいのか?」
「まぁ、そうですね。どうせ私に気がある人なんていないし、私も好きな人いないから誰でもいいです。」

私の言葉をきくと4人とも呆れかえった顔をした。
先ほどまで再起不能だったデジェル先生までも顔をあげている。
確かに無責任かもしれないが、私はそんなにひどいことを言ったか……?

「お前、逆にすげーな。」
「は?何がですか?」
「いや、なんでもねえよ。」

マニゴルド先生の言葉に頭に浮かんだ疑問符が消えない私である。
まぁこれをきいても大したことではなさそうだし、気にしなくてもいいだろう。
それよりも問題はダンスの相手だ。
前もって決めて置かないとまた同じ状態になりそうで怖い。

「だったらアイオリアでいいんじゃないか?同じクラスだろう?」
「この前女の子に誘われてるの見ました。」
「じゃあ……アイオロス。」
「生徒会長が誘われないわけないですよー。」
「サガはどうだ!」
「あの人もてますよねぇ……。」

意外にも生徒の友好関係を知っているらしいマニゴルド先生とカルディア先生がノリノリで名前を挙げて行く。
しかし、その名前はどれもモテる人のものばかりだ。
逆に言えば私のまわりにいる男子がモテる人ばかりなのかもしれない。

「お前……めんどくせえ。」
「あはは。…すんません。」
「もういっそ教師と踊れよ。」
「え!いいんですか?」
「いいわけがないだろう。カルディアも立花をからかうんじゃない。」
「へいへい。」

どうやらカルディア先生は飽き出したようだ。
まぁそれなりの時間この話ばかりだし、良さげな相手はいないし、当然といえば当然なのだが。

「てかそろそろ俺らも行かないとやばくねえか?」

そんなカルディア先生の言葉に時計を見る。
どうやら先生たちも同じだったようで一斉に立ち上がった。

結局私はダンスの相手が決まらずに後夜祭まで行かなければならないようだ。
親友の相手がまだ決まっていないといいなぁ。
そう思いながら先生たちの後を追った。
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