せいんと学園高等部

□せいんと学園高等部
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逃げ出したい、いや切実に。
話の中心にいるのが私だということは理解しているのだが、この状況はいかんせんめんどくさい。
誰か一人を選べばいいのかもしれないが、正直ここにいる人たちなら誰でも良かった。
それくらいにはお互い仲が良いし、気も知れていると思う。

多分この人たちはモテるから女子からお誘いが沢山きているんだろう。
でもジンクスとかで気もないのに結ばれたらかなわない。
それだったらそれなりに仲の良いやつということで選ばれたのが私なのだと思う。
そこまで結論が出たのはいいのだが、そうなるとどういった手段をとるべきなのか私には検討がつかない。
それでこの喧嘩が長引いているというのもあるだろう。

もうほっといて親友のとこ行こうかなぁ……。

…そうか、親友と踊ればいいのか!

思いたったが吉日。
何も言わずに出て行くのはさすがに申し訳ない。
そう思って大声で叫んだのだが、彼らの耳には届いていないようだ。
この様子なら何回か呼びかけたとしても反応してはくれないだろう。
それにここで体力を使いたくないし、大声を出すのもめんどくさい。
もはやあきらめてその場を離れることにした。



「はぁ…なんか疲れたなぁ。」
「そうか、そうか。」
「へっ!?ま、マニゴルド先生……!?」

教室にむかって歩きながらつぶやくと後ろからかかる声に驚きが隠せない。
振り向くと今日は出店がなく、暇だったらしいマニゴルド先生が白衣姿で立っていた。
どうやら化学担当の彼にとって白衣は正装らしい。

「お前後夜祭終わるまで暇だろ?良いもんやるからこいよ。」
「…マニゴルド先生の言う良いもんってろくなものじゃない……。」
「んなこと言うなって!おら、行くぞー。」

こうなったら抵抗しても無駄だ。
きっと後夜祭ギリギリまで拘束されるだろう。
さらば、親友とのダンス。
マニゴルド先生に半ば引きずられる形で私は校舎に足を踏み入れた。


「ほら、ろくなもんじゃない……。」
「あん?うまいぞ、これ。」
「おいしいのは認めますけど、完全に余りものじゃないですか……。」

たどり着いたのはマニゴルド先生の本拠地である理科室の横にある先生用の準備室だ。
そんなに広くはないが、ソファがあったりとそれなりにのんびりできる。
しかし今は机に置かれた大量のムサカを囲んだ地獄絵図が見えた。
すでに餌食になったのだろうデジェル先生とアルバフィカ先生はもう目の前の物体を見たくないというように青い顔をうつむかせてうなだれている。
カルディア先生とマニゴルド先生は元気だが、多分ずっとつくっていたからだろう、手を伸ばそうとはしなかった。
しかし私も昨日一昨日と連続でこれを食べている。
確かにおいしいのだが、さすがに3日連続はきつい。

その様子に逃げ出したい衝動にかられるのだが、無理矢理座らされたソファに無理矢理押さえつけるマニゴルド先生と、自分だけ逃げる気かとでもいうような視線を投げかける死人のような二人のおかげでもはやその衝動は消え失せた。

どうして今日はこんなめんどくさいことにばかり巻き込まれなければならないのか。
学園祭最終日の最後まで楽しむことができるのか正直不安になり、ため息が出た。
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