せいんと学園高等部

□せいんと学園高等部
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保健室を出て、部室についた頃にはもう外は赤くなっていた。
もうすでに部活を終わっているかもしれないと思いながらも部室の扉の前まできた。

もし、まだ部活をやっているのだったら絶対怒られる。

そう思うと扉を開けることが阻まれて先程から扉の前で固まっていた。

しかしいつまでもここでこうしているわけにもいかない。

そう思って部室の扉に手をかけようとした。


「立花・・・!」
「ぶ、部長・・・!」


デジャヴか!
と心の中でつっこみつつ、目の前に現れたサガ部長に驚きが隠せない。

さっきのシャカと同じ状況ではないか。

そう思いながらもサガ部長の後ろを横目でちらっと伺う。

誰もいない?
部活はもう終わったのだろうか。


「遅れてすいませんでした・・・。」
「いや気にするな。まぁ部活はもう終わてしまったがな。」


サガ先輩は苦笑いで答える。
まぁ当然のことでもある。
足をくじいた時動けずにだいぶ長い間そこにいたような気もしていた。
それにアスミタ先生の楽しげな治療も実は結構時間がかかったのだ。
痛すぎて時間などあっという間に過ぎ去ったが。

それをサガ先輩に言うとアスミタ先生の治療については呆れ顔をされたが、それ以外のことでものすごく心配された。


「大変な目にあったようだな。そこに座っているといい。」
「ありがとうございます。」


サガ先輩に促されて私は引かれた椅子に座る。
サガ先輩のその動作がスマートでなんだかお姫様気分になったということは秘密にしておこう。

普段はここで私たちは紙と向き合い、自分たちの選んだ文字を書いていく。
一か月に一度話し合いをしてその月に何を各課を決める。
たしか今日はその話し合いの日だったはずだ。


「今月の文字はこれになったぞ。」
「ありがとうございます。」


サガ部長にお手本であるプリントを手渡される。
他の部員はいないし、プリントを手渡されるということはもう話し合いは終わり、部活も終わったということなのだろう。
なのになぜ部長はここにいるのだろうか。


「サガ部長はもう書き始めてるんですか?」
「いやこれは・・・なんとなく思いついた文字を書いていただけだ。」
「へー。どんな文字を・・・」
「い、いや気にするな。」


不思議に思ってサガ部長が使っていたであろう紙をのぞきこもうとすると目の前に立ちはだかる部長。
そんなに見られたくないような字を書いていたのだろうか・・・。
というか見られたくないような文字ってなんだ・・・。


「あ、あのサガ部長?」
「ああ・・・すまない。さて、そろそろ帰ろうか。」
「え?サガ部長何かやることがあったんじゃないんですか・・・・?」
「いやもう終わったから問題ない。」


そう言ってサガ部長は片付けを始める。
書いた文字は私に見えないように隠しながら。

本人が隠したいのならば気にしないようにしようと他のことを考えようと思った。

しかし、ふと思った。
もうやることは終わったということはなぜサガ部長はここに残っていたのだろう。

もしかして私を待っていてくれたのだろうか。

でもサガ部長は何も言わない。
私がそれをきいたとしてもはぐらかしてごまかされるのがオチだろう。

我ながら自分の都合の良い解釈すぎるかな、とも思うがサガ部長のご好意に甘えたいと思う。


「さぁ帰ろうか。」
「は、はい。」


私が思案している間にサガ部長の帰り支度が終わったようだ。
あれ?いつのまにか一緒に帰ることになってる?


「あ、あのサガ部長・・・!私一人で帰れますよ・・・!」
「いや、その怪我なのに一人で帰らせるわけにもいくまい。送っていこう。」
「いやいやいや!そんなご迷惑をかけるわけには。」
「俺がそうしたいだけなのだ。迷惑などではないぞ。」
「う・・・じゃあお願いします・・・。」


サガ部長はその整った顔で微笑む。
そんな笑顔で、しかもそんなセリフを言われたらことわれる訳がない。
というかサガ部長が断らせないとは思うが。





「あ、そういえばサガ部長。昨日の朝河原にいませんでしたか?」
「河原・・・?いや行っていないが。」


昨日レグルスと喧嘩する前に、親友と会う前に見た光景を思い出してサガ部長にきいてみる。

サガ部長と同じ青い長い髪の人とつながった眉毛の人がにらみ合っていた光景。

サガ部長にそれを伝えるとうなるように考え始めた。
そして何かを思いついたようだったが、同時にため息をついた。


「サガ部長?」
「ああ、すまない。ちょっと思い当たるふしがあってな。」
「えっと・・・?」
「多分君が見たというのは弟のことじゃないかと思う。」
「弟さんですか・・・。」

サガ部長に弟さんがいるなんて初めて知った。
実はサガ部長は書道部の部長という肩書きがあるからだろうか、それとも優等生で容姿端麗だからだろうか。
情報が全校に知れ渡っているほど有名な人だ。

普段はそういった情報には対して興味もわかないのだが、同じ部活の、しかも部長となれば興味がわかないわけがない。

その情報の中に弟がいるというのはたしかなかったはずだ。


「双子の弟でな。海皇学園に通っているんだ。」
「そうなんですか。」


そう言ったサガ部長の顔はどこか遠くを見つめているような、せつなげな顔でそれ以上何かをきこうとは思えなかった。

なんとなく後ろめたくなって他の話題に転換する。

そのあとはせつなげな表情を変え、いつものサガ部長に戻ったようで楽しい会話が続いていった。





「サガ部長、こんなところまですいませんでした。」
「いや、気にするな。ではまた部活でな。」
「はい!ありがとうございました。」


本当に家まで送ってもらってしまった私はサガ部長の後ろ姿を見送る。

明日部活のときに何かお礼しよう。

そう心に決めて私はサガ部長の姿が見えなくなったところで家に入った。
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