せいんと学園高等部

□せいんと学園高等部
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「ごめん、愛。今日生徒会あるらしいから先にお昼食べてて。」
「おお。忙しそうだねー。」
「学園祭が近いからしょうがないわよ。じゃあいってくるわね。」
「いってらっしゃーい。」


シジフォス先生から説教を食らった次の日の昼休み。
午前の最後の授業が終わり、ぽけーっとしていると親友が立ち上がり、私にそう告げると慌てるように教室を後にしていった。

ならば今日は一人でお昼か・・・。

親友が去っていった扉を見つめて私は意を決して立ち上がった。





「んーっ!いい天気!」


青く澄み渡った空の下、私は伸びをする。

普段は生徒は入ってはいけないと噂の屋上。

噂だけが一回りしていて実は鍵がかかっていないことを最近発見した。

ここなら一人でのんびりできる。

そう思ってそのまま寝転がると、屋上にたどり着くために開ける一つしかない扉が開いた。

ここの扉に鍵がかかっていないことを知っているのは私だけなはず・・・。

そう思い、少し怖くなって扉をじーっと見つめた。


「え、エルシド先生・・・!」
「立花・・・!」


見つめた扉から出てきたのは世界史担当のエルシド先生。
まさか先生がくるとは思わなくておもわず驚いて固まってしまったが、それはエルシド先生も同じだったようで扉のむこうで固まっていた。


「わぁ!かわいいネコちゃんですねー。」
「ああ。」


その場で固まっていてもしょうがないと判断した私たちはフェンスによりかかるようにして隣り合って座った。
エルシド先生の手には白と黒の混じった毛色をした子猫。

どうやらエルシド先生が固まった理由は驚いたのはもちろんだが、この子のことを誰にも知られなくなかったというのがあったらしい。

しかしそのまま沈黙状態が続く。

エルシド先生はあまり余計なことはしゃべらない。
寡黙で真面目。それが私の中のエルシド先生のイメージ。

だからこそ私も言葉を探して思わずだまってしまうというのもあるわけだが。


「まさかこんなところにお前がいるとはな。」
「ははは。私冒険するの好きなんです。ここも学校中めぐってたらたどり着いて。」
「噂はとびかっているが、ここに入ってくるのは禁じられてるわけではないしな。」
「エルシド先生もここにくるくらいですもんね。」


からかい口調で言えば若干エルシド先生の表情が曇った気がした。

先生をからかった時点で私が悪いんだろうな。

言ってから後悔するのは私の欠点でもある。


「変だろう?大人の、しかも男の俺がネコと一緒にいるなんて。」
「エルシド先生・・・?」
「こういうやつを見ると思わず拾ってしまうんだ。」


エルシド先生はどこかせつなげに子猫をなでた。
まるで何かに呆れているような、遠くを見つめているような表情。

子猫はエルシド先生にすがるように、エルシド先生の大きな手の中で気持ちよさそうに鳴いた。


「生徒にする話でもなかったな。忘れてくれ。」


そう言ってエルシド先生は先ほどの表情のまま子猫を抱えて立ち上がる。
子猫は突然のことに驚いたようで少しエルシド先生の腕の中から落ちそうになっていた。

そんなエルシド先生に続くように私も思わず立ち上がる。
立ち上がったまま屋上を去ろうとするエルシド先生の服の裾を思わずつかんだ。


「エルシド先生!私、このこと誰にも言いませんから!」
「立花・・・。」
「あと、ネコちゃんはエルシド先生に拾われて嬉しいと思います!!」


私がそう言うとそれに反応するように嬉しそうに子猫が鳴いた。

エルシド先生は私と子猫を交互に見てから少し驚いた表情をした。
そして先ほどのせつなげな表情を崩し、少し微笑んだ。


「あ・・・す、すいません。調子乗ったこと言ってしまって。」
「いや、ありがとう、立花。」


そう言ったエルシド先生はあまり表情を変えずに、でも満足げな感じでその大きな手で私の頭をなでた。

私は思わずつかんでいたエルシド先生の服を話して固まる。

エルシド先生が・・・寡黙で真面目なエルシド先生が私の頭を撫でた・・・だと・・・

そんな私を見てか、この状況を知ってなのか、ネコちゃんが疑問がるように鳴いたのがきこえた。
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