せいんと学園高等部

□せいんと学園高等部
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学園祭が終わって数日が経った。
もはや学園祭があったのが遠い昔のようにも感じる。
それくらいいつものように穏やかな日々が訪れていた。

「おはよう、親友。」
「ああ、おはよう。なんかあんた最近ぼーっとしてるわね。何かあったの?」
「へ?私ぼーっとしてた?」

今日はいつもより早く起きれた分頭も覚醒していたと思っていたのだが、親友からしてみればぼーっとしているように見えるらしい。
しかも最近、と言っていた。
ということはいつにも増してぼけぼけしているのか、私は。
まったく自覚がなかった。

「まぁべつにぼけてんのはいつものことだからいいけどさ。そんなんで大丈夫なの?」
「はい?何が?」
「朝礼を始める。席につけよー。」

まるで親友と私との会話を遮るようなタイミングでシオン先生が入ってきた。
どうやら今日は徹夜明けではないらしい。

「さて今日の連絡だが……。明日からテスト1週間前になる。ちゃんと準備はしているか?」

その言葉に愕然とした。
いつの間にそんなことになっていたとは……。
学園祭が終われば定期テストだということをすっかり忘れていた。
そんな様子を伺うようにちらっと親友がこっちを見て前に向き直る。
そして、だから言ったのにというようにため息をついたのがきこえた。



「あんた、どうせなんも準備してないんでしょ?」
「うっ……。」
「授業中寝てばっかいるからよ。」
「…おっしゃる通りです。」

朝の会がやっと終わり、1時間目の授業が始まるまでは時間がある。親友にテストの相談、もとい助けを求めていると心をえぐられる攻撃が待っていた。
本当に言い返す言葉が見つからない。
いつぞやにカルディア先生が私とシャカはブラックリストに入っていると言っていたことを思い出す。
苦手な教科になればなるほど寝ている率が高い私だが、体育と書道以外は苦手な部類に入る。
つまり、ノートは真っ白だ。

「親友ー!助けてー!」
「嫌よ、あんたがわるいんじゃない。」
「うっ……。あ、アイオリア!」

親友に拒否された分隣のアイオリアに助けを求めよう!
そう思って声をかけようとしたのだが、アイオリアの表情はとてつもなく険しかった。
私の授業中にある記憶を掘り起こすが、彼は結構真面目に授業を受けている気がする。
なのにまるでシオン先生の言葉をきいた時の私と同じような反応だ。

「アイオリア……?テストやばいの?」
「あ、ああ……。ノートはあるんだが、いくらやってもできるようにならなくてな。」

アイオリアはそう言って苦笑いを浮かべた。
私から言わせればそれはまだマシなほうだ。
だってノートはあるのだ。
後はやればできる!アイオリアにはきっと時間が足りてなかったのだ。
そう告げたらなぜかアイオリアは苦笑いをさらに深くした。

「ありがとう、立花。」
「でもアイオリアはいざとなったらアイオロスさんに教えてもらえそうだよね。」

私が言葉を発し終わると前の席でどさっという音がしてそちらを向く。
そこには親友が持っていた教科書をそのまま落としたらしく、足の甲に直撃し、悶絶している姿がある。
そんな漫画みたいなことが!
と心の中でさけびながら悶絶する親友のそばに行き、とりあえず教科書を拾った。

「私だけじゃなくて親友もぼーっとしてたの?」
「そんなんじゃ……ないわっ。」
「じゃあ、何さぁ。こんなことするなんて珍しい。」
「うっさい!なんでもないわ。」

不機嫌になってしまったらしい親友は復活したと思ったらそのまま席に座った。
なんでもないというなら気にしないようにはする。
しかし、その頬は少し赤みを帯びていた気がして私は気がかりにならざるをえなかった。
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