せいんと学園高等部

□せいんと学園高等部
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カミュがミロと話し終わるまで待っていようとライブの終わったバンドの楽屋で待っていた。
もちろんそこには出て行ったレグルス以外はいるわけで当然デス先輩やディーテ先輩と話すことになる。
それはべつに良かったのだ。
いつものことだし、むしろ楽しいから。
でもこの状況になったら楽しいとか言ってられない。
むしろ逃げ出したい。
事の発端はデス先輩の一言だった。




「そういやお前後夜祭の最後の相手決まってる?」

この学園では後夜祭にダンスパーティがある。
ダンスパーティと行っても簡易的なものだからドレスをきたりとかはしないらしいのだが、具体的なことは1年の私は知らなかった。

「このダンスパーティにはジンクスがあってね。最後の曲で踊ったペアは結ばれる、っていう話。」
「へぇー!素敵な話ですね!」
「ありきたりな話ではあるがな。まぁそれが本当ならあやかりてえからな。」

そんなロマンティックなジンクスがあったとは知らなかった。
私も叶うならデス先輩のようにあやかりたい、そう思ったが、べつに結ばれたい相手がいるわけでもない。
しかも今まで誘ってくる相手もいなかった。
つまりはそういうことなのだ。
さみしいのぅ。
なんて自己完結するとデス先輩とディーテ先輩が真剣な顔で詰め寄ってきた。

「で、どうなんだよ?」
「相手決まってるの?」
「いや相手とか…!そんな大層な人いないですよ!」

否定の言葉を返せば二人はしめた!とばかりに、にやりと笑った。
なんなんだ、一体。
だんだん距離がつまっている感じさえして一歩、一歩と後ずさりする。

「じゃあ俺と踊ろうぜ。」
「蟹なんて無視して私と踊らないか?」
「え?えぇえええ!?」

この二人がこの笑みを浮かべている時は大抵悪ふざけを企んでいる時なのだが、今回はまさかのお誘いだった。
思ってもみなかったところから攻められて驚きを隠せない。
しどろもどろになり、返事を返せないでいると二人と私の距離はどんどん近くなる。
一応逃げの体勢をとったのだが、背中と壁がもはやくっついている。
まだせめたててくる二人に困り果てていると二人越しに声がかかる。

「お前たち何をしているんだ?」
「あら、シュラちゃん。おはやい到着ですこと。」
「…なんの話だ。お前たちが教室に戻らないから迎えにきてやったんだが、何をしている?」
「何って……愛ちゃんをダンスに誘ってたとこ。」

ディーテ先輩の言葉に呆れ顔だったシュラ先輩の眉がピクリと動く。
そして今度は真剣な表情になってこちらに向かってきた。
なんだか嫌な予感しかしない。

「こいつらなんかほっといて俺と踊らないか?」

シュラ先輩参戦…!
頭の中でゴングが鳴り響く。
なぜ今の流れでそうなってしまうのか。
私には理解できなかった。
しかしその間も3人からの攻撃は止まない。
とめどなくダンスに誘ってくる先輩たちになす術なく、いやぁ、その、しか言えない。

「何やってんだお前ら?」
「ミロ…!カミュ…!助けて…!!」
「どうしたんだ、立花?」

3人から逃げるように話し終わったらしいミロとカミュの後ろに隠れる。
そして一通りの事情を説明すると、ミロはくだらないとため息をついた。

「はーん…。ミロ、お前自信ねーんだろ。」
「は?どういう意味だよ?」
「こいつ誘ってもお前じゃオッケーもらえなそうだもんなぁ。」
「なんだと!?」

次にため息をついたのは私の番だった。
助けてくれると思ったミロがいとも簡単にデス先輩の挑発に乗っている。
この調子ならミロもあちら側に参加しそうだ。
チラリとカミュを見ればカミュも困った顔をしている。

「カミュ…?」
「実は……私も君を誘おうと思っていたんだ。」

私の平和な時間終了のお知らせ。
気づけばデス先輩とミロは喧嘩を始めているし、カミュの言葉を聞き逃さなかったらしいディーテ先輩たちも何やら言い合いを始めていた。
つまり、私以外のここにいる人たちでの喧嘩が始まったのである。
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