せいんと学園高等部

□せいんと学園高等部
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青い空。

流れる雲。

静かな河原。

揺れる青い長い髪とつながった眉毛。

彼らの戦いが今、始まろうとしていた。



「で、あんた今度は何を見て妄想始めたのかしら。」


毎朝同じ道を一緒にあゆく親友と私。
今日も今日とてたわいのない話題をしているつもりだったが、親友は呆れたようにつぶやいた。


「何を見たって・・・文字どおりだけど。」
「はぁ?」


今朝親友に会う前に見た光景を物語調に行ったのが先ほどのつぶやきだ。
妄想というほどのことではない。
実際に今にも喧嘩が始まりそうだったのだから間違ってはいないはずだ。


「まぁ、ぶっちゃけどうでもいいわ。」
「ひど!おもしろいかなぁと思っていってみたのに!」
「で、実際その光景はおもしろかったのかしら。」
「いえ・・・まったく。とても怖かったデス。」


本当に殺気だっていたから私はその場から逃げるようにダッシュで親友のもとに向かったのだ。
おかげでない体力の半分以上を使った気がする。
一限は睡眠時間に当たること決定だ。


「そこで悩んでると置いてくわよ。今日の当直シジフォス先生だから遅れるわけにはいかないでしょ。」
「え!!シジフォス先生なの!?やばいじゃん!」


私が考えている間に親友はずいぶん前をあゆいていた。
置いていくとはなんとひどいやつ。
しかし、当直がシジフォス先生ときいたら急がないわけにはいかない。
彼を怒らせるとひどい目にあいかねない。


「待ってよー!ってわぁ!?」



急いで親友を追いかけていたからだろうか。
それともここを曲がれば学校だと思って安心したからだろうか。
私は目の前にある障害物に気づかずに転ぶ。
それはもうすごい勢いで。顔面スライディングとはこういうことをいうのだろう。


「いったー・・・誰よ、こんなところに物置いた・・・の・・・」


言いながら視線をそちらに向ければそれは物ではなかった。
物じゃなければなんなのか。
答えは簡単、人だ。

金茶の髪に青い瞳、私に踏まれて目を覚ましたらしいレグルスは眠たそうに目をこすっていた。


「あんたまたこんなとこで寝てたの、レグルス。」
「しょうがないだろー。朝起きたら活動しないと気がすまないんだ、俺。だから眠くなるmmだよ。」
「何回もきいたわよ、それ。」


レグルスは何も気にしていないという口調で笑った。
しかし私が言った言葉と呆れ顔にムッとしたらしい。


「でもお前だって毎回俺を踏んで転ぶじゃん。学ばねーってこういうこと言うんじゃないの
。」
「なっ・・・!こんなとこで寝てるなんて誰が考えんのよ!」
「ここにいるじゃん。」
「それはあんたがバカだからでしょうが!」
「お前にいわれたくねーし!」


そんあレグルスの言葉にカチンときた私は言い返す。それにレグルスも言い返す。
それを繰り返せばお互いの悪口を言い合うのは必然だ。


「お前たちは毎回毎回飽きないなぁ・・・。」
「「え」」
「ここがどういう場所だかわかってやっているんだろうな。」


レグルスとの言い合っている最中私たちではない声が乱入した。
その声のしたほうを見れば声の主は顔は笑っているが、目は笑っていない状態で腕を組んで私たちの目の前に立っていた。

周りを見回すと、登校時間ゆえに沢山いた生徒も、先を歩いていた親友の姿も消えていた。

背中を嫌な汗が伝う。

レグルスもそれは同じようで少し青い顔をしていた。


「シ、シジフォス先生・・・。」
「お前たち、とりあえず職員室にきなさい。」



















「た、ただいま・・・。」

「おかえり。今日は解放されるの早かったわね。」


朝のレグルスとの喧嘩事件。
そのままシジフォス先生に職員室に連行された私とレグルスはシジフォス先生の説教を食らっていた。

先生方はいらっしゃるし、
こってり怒られるし、
反省文は書かなきゃいけないし、
げんこつは食らうし、
見つかったのがシジフォス先生というのが運のつきだった。


「おつかれだな、立花。」
「アイオリア・・・おはよー・・・」
「ああ、おはよう。」


親友の席の後ろである自分の机に座り、ぐったりとしていると隣の席のアイオリアが話しかけてきてくれる。
レグルスと喧嘩まがいをして説教を受けるのが定例になってきた私であるが、アイオリアは毎回気遣ってくれる。

本当になんなんだ。
いい子すぎるではないか。

アイオリアは少し筋肉バカなところはあるが、すごく優しい良いやつだ。
この前お弁当を忘れたわたしに少しおかずを分けてくれたし。

こいつがもてるのはすごくよくわかる。
隣の席になれたことがちょっとだけ誇らしくなるくらいだ。


「アイオリアー・・・」
「どうした、立花。」
「へへ、呼んだだけー。」
「そうか。」
「あんたたち、そのやり取りきいてるとまるで彼氏と彼女だからやめなさい。」


なんとなくアイオリアをかまいたかっただけなのに、親友に止められてしまった。
アイオリアと私がかれかのに見えるとか、アイオリアに失礼だな。うん。
気遣いのできるアイオリアには年下のふんわりとした子が似合いそうだ。

「ぐふふ。」
「またなんか妄想でも始めたのかしら。ね、アイオリア。」
「えっ・・・な、なんだ・・・?」


妄想とは失礼な。
アイオリアにどんな子が合いそうなのか考えてただけなのに、まったく。

私がそう思って隣を見ると、アイオリアは顔を真っ赤にしてぼーっとしていた。

どうかしたのか。
ああ、好きな子のことでも考えてたとか・・・

いいなぁ、青春だねえ。
なんてぼやっと考えていると前の親友からため息が聞こえた気がした。

ため息つくと幸せが逃げていくぞ、親友よ。
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