paranoia長編
□姫か獣か
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-フィオーレ王国
時はまだ魔法は売り買いされておらず、魔法を使う者は極僅か 買おうものなら半月分の食料が買える程の大金を払わなければならない時代だった。
しかし この国の中心付近にある城のお姫様、ナツは別だった
生まれながらに強い魔力を持っており、魔法を愛し 人々を魔法で救ってきた姿は、さながら天使のようで 彼女に目を惹かれる異性がいるのは勿論、周りの人々や民からも愛され育ってきた。
容姿は本当に美しく、長い睫毛に丸く大きな光輝く瞳、透き通るような白い肌に平たい身体をしている。
そして極めつけは綺麗な桜色の髪の毛。
一目見れば惚れてしまいそうになるその容姿は本当のお姫様で。
そう、容姿は..
「だぁあああ!邪魔だこの野郎!オレは外に行くんだああ!」
「いけませんナツ姫!外は野獣だらけです!汚いです!」
幼い頃は竜に育てられてきたナツは、どちらかというとやんちゃで男勝り、非常に厄介な性格だった。
ナツに遣える者達は何時ナツが逃げ出すのかハラハラしながら24時間見張っているのだ。
「汚くねぇよ!こんな城のがむさ苦しい!」
「ですが、!!」
ナツにお供する遣いは毎日変わり、ほぼBGのような男ばかりだが、今日はか弱そうな姿の少女、ウェンディという幼い見習い執事だ
それを見計らったナツは今日、脱走する気満々だった。
ナツの思考を把握しているウェンディは鼻を真っ赤にして目頭に涙を溜めて必死にナツを止めるようにしがみついている。
「はぁあ...もうわかったから、泣くなよウェンディ」
その姿に折れたナツは抵抗をやめ、ウェンディの頭を優しく撫でた。
「ナツ姫!」
瞬間ウェンディは笑顔になり、ぎゅっとナツに抱き付いた。
(はぁ。何時脱走するかなぁ)
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