赤毛の双子の魔法
□とうめい人間2
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「もう最悪だよ!!僕はあんな奴らの弟として産まれてしまった事を心底後悔するね!」
そう捲し立てながら談話室へと入ってきたロンを見て、ハリーは口をあんぐりさせた
「あー…きみ、どうしたの?その、凄く……粉っぽくなってるけど」
今やその燃える様な赤毛を隠し、ロンの全身は頭からつま先まで真っ白な粉まみれになってしまっている
「フレッドとジョージだよ!分かるだろ!?あいつらときたら!…いや、奴らが大人しく僕に物を返すとは思ってなかったさ…けどこの仕打ち!僕が何をしたって言うんだよ!?」
悲痛な声で叫ぶロンに、ハリーは何と声をかけるべきか悩む
「うるさいわよ、ロン。ここは談話室なの。他に人もいるんだから静かにしてくれる?」
本から顔をあげたハーマイオニーは、眉を顰めて、最高に迷惑だと言わんばかりの冷たい視線を送る
「な、君ッ…この、僕の姿を見てそんな事しか言えないのか!?」
また始まったなと、ハリーは深いため息を吐いた
「ええ、そうよ。あなたは遊んでるけど私は勉強をしてるの。きっと明日あたり魔法薬のテストがあるに違いないもの」
「これが!遊びに!見えるだって!?君やっぱりおかしいよ!」
怒りに顔を赤くさせたロンはハーマイオニーに噛み付く(もっとも今は顔も真っ白なので、予想に過ぎないが)
立ち上がったハーマイオニーは、やけに馬鹿でかい本を脇にかかえフンッと鼻を鳴らせる
「何度も悪戯に引っかかる方がおかしいのよ。私もう部屋に戻るわ。誰かさんがのおかげで勉強が捗らないから」
「そりゃあいい考えだね!出来れば、いや、出来なくても一刻も早く部屋に戻ってほしいもんだよ」
「言われなくったってそうするわよ。それから、あなた気づいてないようだけど、さっきからあなたが動く度に粉がそこら中に舞ってるの。早くシャワーでも浴びるべきね」
そう言い残して談話室を去って行くハーマイオニーは、最後にローブに着いた粉を払う動作をして出て行った
「明日はテストがある事を祈るね。勿論、魔法薬以外の授業で」
忌々しげに談話室の扉を睨みながら、ロンは呪いのように呟いた
「ロン、でもハーマイオニーの言う通りかも。君、早く粉を落とした方がいいよ」
ハリーは優しく、ロンをシャワー室に向かうように促す
「はぁ…うん、ごめんハリー。君のローブにも沢山ついちゃってる」
落ち着きをとりもどしたロンに、ハリーは気にしないで、と声をかけようとしたが
「「あれあれ?ロニィ坊やじゃないか?」」
談話室に入ってきた愉快そうな二人の声にピタっと固まった
「んん?おい、フレッド、あれは本当に我が弟か?ウィーズリー家の証である赤毛じゃないぞ」
「ああ、確かにジョージ。見間違えてしまったようだな。ハリーが近くにいたもんだからさ」
「そこの真っ白なキミ、すまなかったね」
「ああ、ゴメンよ。よりによってロニィと間違えちまうなんて」
プルプル震えながら拳を握り俯くロンを尻目に、ハリーは笑いをかみ殺すのに必死だった
「なあ、ところで真っ白なキミ」
そう言いながらフレッドはロンの右側に立ち
「凄く気になるんだけど」
とジョージがロンの左側に立つ
「「君、ケーキ作りにでも失敗したのかい?」」
「ブハッ…あ、ごめんロン!」
とうとう吹き出してしまったハリーは慌ててロンに謝る
「いいんだ、ハリー…笑いたければ笑えよ」
あまりに悲惨なロンの姿にハリーは笑いが引っ込んでしまったが
「「それでは、遠慮なく」」
と、双子はゲラゲラと笑い出してしまった
「傑作だよな!あんなに簡単に引っかかるなんてさあ!」
「ああ、腹が千切れそうだぜ!」
ヒーヒーと笑い転げる二人を尻目にロンは
「シャワーを浴びてくるよ」
とだけハリーに言い残して談話室を出て行ってしまった