内実コンブリオ

□第3章*第2話
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本日も凛と参りましょう。

そう、くじけずに凛と…



「咲宮さん、これやり直して。こんなんじゃあかんわ」

「すいっ…」



ああ、変わらないと。



「…頑張ります」

「うん、頑張って?」

「はい…!」



何だか不思議な変化に気付きはじめたのは、つい最近。

女性の先輩方についてだ。

自分に向かってくる笑顔が増えた、ということだ。

最初は、気味が悪いなとか思っていた。



「悪いけど、今日あたし早退なんやんか。やから、過去の書類処分、頼んでもいい?」

「わかりました」

「頼むわ」

「はい」



疑っていた。

でも、先輩方は善良そのもので、失礼なのは自分の態度の方だと気付く。

本当はこんなにも優しい人達だったのに。

昔から人の第一印象を悪く見てしまう。

これが自分のいけないところなのかもしれない。

そして、もう一つ。



『頑張ります』



角野先輩と約束したこの言葉を使い出す様になってから。

言葉には言霊がついている、というけれど、本当にそのパワーなのか。

「すいません」という弱気に聞こえるその響きからの「頑張ります」はすごい力を持っている。

決して、力強いとは言い難い言葉だけど、「すいません」と「頑張ります」では、自分自身の気持ちの持ち様まで変わった気分だ。

そして、その言葉の力は自分から溢れ出して、周りに影響が広がっていく。

自分の思い込みが、目に見える気がした。

確実なんかじゃないけれど。

さて、昼からは書庫に篭るとするかな。





て、手が…いや、腕か…?

とにかくそこら辺が痛い。

外に出れば、もう真っ暗。

10月の午後7時といえば、当たり前か。

しかし、あんなに捨てる書類の量が多いとは思わなかった。

自分なんかが言うのも何だけど、もっと容量よく捨てようとは思わないのか。

こう…少しずつ少しずつ。

何年分もためておくなんて。

封筒の名前を切り取るだけでも大変なのに。

しかも途中でシュレッダーが壊れるという大事件。

手作業でいつまでも仲良しな文字たちを引き離していく。

文字たちには、少し悪い気はしたけれど。

…で、今に至る。



「…遅くなってしまったな」



星空が瞬く帰り道。

今日も無事終わりを迎えることが出来た。

さあ、お腹も空いたし、駅へ向かうとしようか。
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