内実コンブリオ

□第1章*栗山side 後編
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…かと言って、これは使いすぎだろ。

完全に表情と言葉の最大積載、重量ともにオーバーだ。

溢れ出し、黒いオーラとなり、この空間を制圧している。

今度はなんて上手いこと言っているんだ、俺は!

いや、別にそんな事はどうでもいいか。



「お、お前は何言ってんだよ。冗談…やめろよな…」



そのうち俺もこの空間に飲み込まれそうだ。

声が震えて、俺の口からは情けない音しか出ない。

そんな俺とは裏腹に、やけにしっかりとした低めの声で水川は言う。



「あ?冗談ちゃうわ。常識っちゅうもんを知らんから、教え込んだろゆうとるだけやわ」



こいつも頭おかしいんじゃねーのか?

俺は、脳内花畑って意味でだが、こいつの場合は全く違う。

水川の頭の中は沼の様だ。
それも真っ黒の。



「お前も正直、気にいらんのやろ?」

「俺はっ―」

「ダチやんなぁ、俺ら」



こいつ、変なところで友達って言葉を使いやがる。

その言い草はまるで、女子特有のねちっこさだ。



「まぁ別に俺はお前がどうとか、どうでもええけど」



その時の俺は情けないことに友達という言葉の恐怖に負けた。

そして、俺は同盟という名のいじめグループに所属するはめになってしまったのである。

ここから先の出来事は、涙なしでは語れない、俺が個人的に。

変な同盟を組まされて、数日後。

太田大門という奴ともつるむ様になる。

こいつも同じ野球部だ。

今後、3人で行動することが多くなっていった。

そんなある日、突然俺にとって地獄のような指示が出された。

嫌々ながらも従った俺もバカだった。

たまたま咲宮さんの机の隅に置いてあったもの。

わりと大きめで白く、真ん丸な消しゴムらしきものが本当にたまたま水川の目にとまったらしい。

それは、ねり消しゴムというものだった。

ねり消しゴムを知らない人は、ほとんどいないだろうと思うけど。

一応説明すると、スライムとまではいかないが、粘土の様な消しゴムだ。

ただあんなに大きなねり消しゴムを今までに見たことがなかったから、どこで売っているのか少し不思議に思ったのは確かだ。

俺はそのねり消しゴムを、咲宮 華さんの頭につけろ、と命令されたのである。

ねり消しは一度しっかり張り付くと、とるのが難儀だ。

さらに、手だけじゃなかなか取れない。

しかも、髪にくっついたら風呂に入らない限り取れないだろう。

咲宮さんはきっと困る。

そんな事を俺がやった。

周りの奴らは思いっきり笑ってやがる。

俺は笑えねぇ。

笑えねぇよ。

でも、黙ってそれに従う俺自身にも何だか笑えてきた。

これを聞いて、酷いと思う人もそんなこと特に大した事じゃないだろうと思う人もいるだろう。

そう思う人が1人くらいいてもいいというのに、どいつも見てみぬフリ、ひどい奴は、一緒になって大笑いしてやがる。

何が面白いんだか。

すると、いつも本を読みっぱなしの咲宮 華さんが突然動いた。
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