お茶にしましょうか
□Scene 8
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私は、いつもお節介が過ぎるのでしょうか。
小学生の頃ですが、地域の楽団に所属していました。
その中でも、同学年の人たちから「鬱陶しい」と言われたことがありました。
今思えば、幼いころから私はお節介だったようです。
しかし、お互い笑いながらでしたから、当時はふざけ合っているものだと思っておりました。
現在、勧誘する際にも、こういった己の性格が滲み出ているのでしょう。
そのために、人が集まらないのだろう、と自分でも理解には至っております。
いつも一人、可笑しな方向へ突っ走ってしまうのです。
しかし、あの方は私がこの様な性格でありながらも、いつでも真剣に受け止めてくださるのです。
今思えばこそですが、私が偉そうに何を話しても、一語一句を真っすぐ、真剣に受け止めようとしてくださいます。
こういった私をその様に対応してくださるのは、おそらく彼が初めてだと思われます。
そのためなのでしょう。
私がこれ程までに彼に惹かれるのには、こういったことが関係しているのだろう、と思いました。
この様に何について思っていても、最終的には江波くんに辿り着いてしまうのです。
ええ、いつも考えてしまう程に、彼のことを好きでいるのです。
只今、昼の休憩時間です。
私は、校内を歩き回っているまさに真っ只中でした。
何をしているのか、と言われますと「吹奏楽部」へ勧誘するためのポスターを貼りながら、チラシを配り歩いているのです。
私は、まだまだ諦めません。
この様にたった一人、浮いている様な私でも、もう一度合奏をしたいのです。
幾人に紛れ、音と、人とが、重なり合う喜びを味わいたい、と日々願っています。
しかしそれも、なかなか叶わぬ願いであります。
実はほんの数日前にもチラシを配るであったり、ポスターを貼るであったり、今日と同じ様に活動しておりました。
ほんの数日前を、少し思い起こすことにいたします。
私は学校の中庭にて人を見かけては声をかけ、断り続けられていました。
偶然にも私に声をかけられてしまった相手の方々は、さも煩わしそうに私を避けてゆきました。
通り過ぎようとする方々も、絶対に目を合わすまい、と私から逃げてゆくのです。
私もよほど、必死だったのでしょう。
気を遣うということを、忘れていました。
私は少し落ち込み気味に、中庭の花壇に腰をかけました。
その時だったのです。
「こ、こんにちは。」
できる限りの笑顔を、私はつくりました。
ほぼ毎回、お馴染の登場の仕方で現れる江波くんが、私の正面にて制服姿で直立していらっしゃったのです。
彼は、遠くに見える仲間たちの輪から、わざわざ抜け出してきてくださった様でした。