お茶にしましょうか
□Scene 15
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舞台から降りると、音楽の先生と担任が、既に待ち構えてらっしゃいました。
「ごめんなさいね。」
突然に謝られたのは、音楽の先生でした。
「再生ボタンを押すだけだって、聞いていたものだから…
音量が前のグループのままだったみたい。本当にごめんなさい。」
「先生、あまり気に病まれないでください。私は、十分に楽しみましたから。」
罪悪感に苛まれていた先生を諭すように、私は微笑み言いました。
すると、少し肩の荷が下りたのか、先生は表情を楽にしてくださいました。
「伴奏に誘ってくれて、ありがとう。良かったら、一緒にアンサンブルコンテスト、出場しましょう。」
先生の言葉に、私は本当に嬉しく思いました。
しかし、2人だけの世界に入り込もうとしていたのを、担任が遮るようにに割り込んできたのです。
「おい、萩原。お前、凄いじゃないか!あんな凄い特技を持っているのなら、何故言わない?!」
「毎日、練習していたじゃないのよねぇ。ねぇ、萩原さん。」
「そうだったのか。知らなかったな…何故堂々と練習しなかったんだ?」
「それは…わたし、一人では音楽室の使用許可はおりませんので…」
私がそう言うと、担任は不思議な顔をしたのです。
そもそも担任はいつも、私に厳しい態度で接します。
いつもそのような担任が、今日に限って親しいことに、私も不思議そうな顔をいたしました。
すると、担任は腕組みをすると、こう言ったのです。
「よし。では俺が是非、音楽室を練習場所に使わせてもらえるよう、掛け合ってみよう。」
確かに担任が、そうおっしゃったのです。
しかし、私はある時から、気持ちが変わっていたのです。
「いえ。練習場所は、結構です。」
そして、私はリョウさんを両手で支えるようにして、先生方の目線に近づけるために、少し持ち上げました。
「この相棒を、安全に預けられる場所だけを、いただきたいのです。」
「え。」「萩原さん、どうして?」
「練習は、どこでもすることが出来ます。だから場所は、その日の気分で変えられるほうが楽しいのです。しかし、皆さんが走り回る教室に相棒を置いておくのは、とても恐いです。何時、誰に蹴飛ばされてしまうか…
練習の時間まで、いつも冷や冷やしておりました。ですから、相棒を置いておくのに、安全な場所だけがほしいのです。」
「そうか…」
担任はわかったと言って、後日校長先生に掛け合ってくれる、と約束してくださったのです。
たくさんのことが起こった初舞台でしたが、結果良ければ、全て良し、なのです。
何より、楽しむことが出来たのですから。